幼女の結界
はあ、はっ、は
歩く。俺は歩く。歩き続ける。
一体どれくらいの時間歩いただろうか。数十分か数時間か、その感覚すらも麻痺している。
休みはない。ただ歩く。早足で歩き続ける。ときに孤を描き、ときに間をすり抜けながら、この四角い部屋の中を歩き回る。
窓もない、どこを向いても真っ白な部屋。20〜30m四方くらい。さほど広くは無い。
いや、ひとつの部屋としては十分な広さだ。窓をこしらえて、家具を置けばそれは豪華なリビングルームになるだろう。
しかし、こと運動するに関しては明らかに容量不足だ。しかも多数対一人の鬼ごっことなればなおさらだろう。
「……」
切なそうな瞳が俺を追う。
逃げる。ただひたすら逃げる。同じ顔をした五人の女の子から、逃げる。
最初はたったの一人だった。そもそも、俺がこの子を追い詰めたはずだった。あの路地裏で問い詰めるはずだった。どうしてキミみたいな子が『あんな奴ら』に組してるのかって。
見るからに弱弱しく、可愛らしい女の子。
命令されているのか、弱みを握られているのかわからないが、奴らの幹部が目撃されたとき、決まって小さな女の子が一緒にいるという情報があった。俺も実際に何度か目にすることがあった。
奴らは異能の力を悪用する犯罪グループ。俺もまた異能の力を持った人間だが、そのグループを壊滅させるために集まったチームの一人だ。
警察じゃない。裏社会の非公式なチームだ。異能の力を社会に役立てて、異能者の社会的差別をどうにかなくそうとしてる俺たちにとって、奴らは悪。邪魔者以外のナニモノでもない。
だから消す。警察に任せてられない。
「ううん、わたしがお兄ちゃんに来てもらったんだよ?」
俺の異能、探知の力で探し出した女の子は、追い詰められた先で俺にそう言った。瞬間、視界が一斉に白に染まった。
固有結界。
この女の子も、異能者だった。
その姿を俺の能力で見つけた時点で、仲間に連絡を入れる前にワンマンプレイに出てしまったのが仇となった。
もたもたしているうちに逃げられてしまったら。そんな気持ちが焦りとなった。
固有結界に飛ばされた先で、膝をついた俺に女の子は無防備に近づいてきた。大人サイズのぶかぶかな白いTシャツをワンピースのように着こなし、すそをスカートのようにふわりと揺らす女の子。その表情、様子に敵意が無さ過ぎて、とまどっているうちに簡単に懐に入られてしまった。
実際に攻撃を受けたわけじゃない。ただ抱きつかれた。驚いて一歩引こうとする、その中腰の姿勢に抱きつかれた。甘えるように「へへー」と笑いながらギュっとしてくる女の子は、自分に懐いてる親戚の子みたいに感じた。
この子をどうしていいかわからず、持て余した。助けを求められたのかとも思った。しかしすぐに違うとわかった。
女の子は俺の首もとに顔をうずめたまま、体を全部俺に預けていた。体温は高く、その体は柔らかかった。くすくす笑う女の子は、「おにいちゃんいい匂い」と口にしながら、小さく鼻を鳴らした。戸惑った俺は、「おい」と口にした。首筋をくすぐる目の前のやわらかい髪から、シャンプーの清潔な匂いが香った。襟元の大きく開いたサイズ違いのTシャツから、健康的な肌色が覗いていた。
気付いたときには、俺のワイシャツのボタンがほとんど外されていた。
歩く。俺は歩く。
「お兄ちゃん……」
切に俺を求める声。恐ろしく保護欲が掻き立てられる。今すぐ抱きしめてやりたい。でもそれはできない。
そんなことをすれば、今度こそ逃げられなくなるから。
女の子の行動に気付いた俺は、すぐに突き放した。動揺していたのもあって、思ったより力が入ってしまった。俺は「あっ」と声を上げ、女の子は尻餅をつく格好でうしろに倒れた。
上体を起こした女の子は、みるみるうちに涙を溜めた。今にも泣き崩れそうな表情だった。
「うう」と泣き声を上げるが早いか、俺は女の子を抱きしめた。優しく抱きしめて、その小さな頭を撫でた。ごめん、ごめんと謝りながら、優しく撫でた。
そうしないことにはたまらなかった。女性に、それもまだ年端もいかない女の子に暴力を振るったんだ。耐えようのない罪悪感だった。
泣き声はすぐ収まった。
「痛かったよう」「ごめん、本当にごめん」「うん」。敵味方とか、損得勘定とか、そんなのを越えたところで行われたやりとりだったと思う。
泣き止んだ女の子は、俺に「もっとなでて?」とねだった。俺はそれをしてやった。
柔らかくて小さな体はすっぽりと腕に収まっていた。気持ちよかった。なでる髪の毛は痛みを知らず、生命力に溢れていた。手ぐしでその髪の毛を弄ぶと、えもいわれぬ快感が指の間を通り抜けていった。女の子はくすぐったそうに笑った。
笑い声を聞いて、救われた気分になった。罪悪感が少し無くなった。もっとしてあげようと思った。違う、したくなった。
女の子は撫でる度に喜んだ。俺に預けた小さなからだを猫のようによじらせた。甘えるように笑い声を上げた。
俺のワイシャツを掴んでいた手は、いつのまにか俺の胸あたりを肌着越しにさすっていた。くすぐったくて、気持ちよかった。
その行為に違和感はあった。自分が妙な気分になっていくのも感じていた。
生暖かい感触をおなかに感じた。肌着の中に手を入れられた。柔らかい手が俺の素肌をなぞった。ぞくぞくしたものが背中を駆けた。
ついに俺は身を引いた。
両肩を抑えられた女の子は、きょとんとしていた。
「どうしたの?」と聴くので、「くすぐったいから」と答えた。届かない手を伸ばしながら「これじゃお兄ちゃんに触れないよ?」と言うので、もう一度「くすぐったいからさ」と答えた。
「触りたい」。ついに女の子が口をとがらせる。駄々っ子のおねだりだ。それでも魅力的なお願いだった。それをさせてあげたかった。でも何かが危ない気がした。
数回のやりとりの後、「もういい」と口にした女の子は目を閉じた。胃の底から何かが湧き上がってくるような、異能者が力を行使するときの独特の感覚がした。
俺の視界に白い何かがすうとフェードインして、横切った。
振り返って確認するより前に、聞き覚えのある笑い声と、背中に密着する体温と、おなかまで回された細い腕。
後ろにいたのは女の子だった。俺が今、肩を掴んで制止しているはずの女の子だった。考えるより先に、後ろの女の子が両手で俺の体をさすり上げた。くすぐったくて、気持ちのいい感触。
慌てて後ろの子を引き剥がしにかかる。その体を少し離すことに成功したとき、片手が空いたことで、目の前の女の子が俺の制止を振り切ってまた抱きついてきた。
楽しそうに俺のおなかにぐりぐりと頭をこすりつける女の子。その手が俺の肌着を持ち上げ、また侵入してくる。
肌の露になった部分へ、女の子が顔を密着させてくる。離そうと肩に手を置いたとき、ぬるりという感触が俺のお腹を襲った。思わず力が抜けてしまった。女の子が舌を這わせていた。
それはとんでもなく背徳的な光景だった。
女の子は俺のお腹から胸を撫でさすり、舌でにるにると舐めまわしてくる。力が入らなかった。
それをいいことに、後ろからも手が伸びてきた。俺の体をなぞる手は、あろうことか腰からさらに下の方へと移動する。その手がソコに到達したとき、俺はやっと気付いた。自分が反応していることに。
我にかえった俺は、思い切り体を横へと逃がした。
その反動で、女の子の一人はよろめき、もう一人はバランスを崩して倒れた。わあ、きゃあという声が立て続けに響いた。倒れた子のぶかぶかなTシャツがめくれて、健康的なふとももと、小さな赤いリボンのついた白のパンツが見えた。
俺はすぐに目を逸らした。逸らしてしまった。
ソウイウモノとして見てしまった。目を逸らした自分に愕然とした。こんなにも小さい女の子なのに、そんな対象として見てしまったことに恐ろしくショックを受けた。
女の子が二人になった、その現象にはそこまで驚かなかった。この固有結界限定での能力なんだろう。
俺の能力は戦闘向きじゃなくとも、仲間のサポートに回ることは多い。異能者同士の殺し合いなんてのは腐るほど見てきた。そしてそのだいたいが常軌を逸している。
「うう」
立ち上がった女の子は、目元をこすりながらこっちに歩いてくる。
された行為と、自分の状態と、また乱暴を振るってしまったことと。思考が整理できてない俺は、思わず後ずさった。女の子の顔が歪んだ。倒れなかったもうひとりの女の子は、両手を胸の前で合わせ、心配そうにこちらの同行を伺っていた。
「お兄、ちゃん」
「いや、あの、さ」
ごめんと言いたいけれど、それはなんだか違う気がした。でも、否定もできなかった。
また一歩女の子が近づく。俺は後ずさる。
「あ、やだ、やだあ」
大好きなものを奪われたように狼狽する。近づく足が止まる。俺が離れるのを恐がっている。
「そこにいて、お兄ちゃん」
「いや…」
俺は混乱していた。この子をすぐにでも抱きしめてあげたかった。変なことさえなければ、それをしてあげられる。でも「変なことしないなら、ここにいるから」なんて、男としてなんと情けないセリフだろう。
そもそもこんな小さな子相手に、そういうことを警戒するなんておかしすぎる。けん制すること自体がおかしい。変なことって何? と聞かれたところで、ちゃんと答えられる気もしない。
もうわからない。どうすればいい。何が正解だ。
「お願い、動かないで」
女の子は俺へとおそるおそる手を伸ばした。その距離で届くはずも無かった。でも近づこうとはしなかった。俺の拒絶を本気で恐れているのが、痛いほど伝わった。
「ねえ、そこにいて? そっちいっていいよね? だめ?」
片足が、白い床をこするように前へ出た。半歩にすら届かない、小さな小さな前進。
「わたしのこと嫌い? やだ、そんなのやだ」
今にも泣き出しそうな顔。胸がぎゅううと痛くなる。痛くてたまらない。
「待って、待ってて」
もう一歩。俺は動けなかった。
さらに一歩、また一歩。その足取りはたどたどしい。
「……」
「……」
ついに、最後の一歩まで距離が詰まった。その一歩で、伸ばした手が俺に届く。
息を吸った女の子が、先に動いた。俺も動いた。その恐怖と切なさが入り混じった表情が崩れて、見えなくなった。
女の子は、俺の腕の中に居た。抱きしめてしまった。
短い両腕が、俺の後頭部へとまわされた。ぷにぷにの二の腕が俺の両頬に密着した。女の子のまんまるの瞳が、至近距離で俺をじっと見つめていた。水気で潤んだ大きな黒目は、そのまぶたがゆっくり閉じられて見えなくなった。
唇の端に、柔らかすぎる感触が襲った。女の子のまつげがすごく近くに見えた。今何をされているのかはわかった。何をされるのかもわかっていた。なのに拒絶できなかった。
女の子の唇が離れた。薄っすらと目を開けた女の子はどこかぼーっとしているようで、頬は赤くなっていた。
数秒の間見詰め合った。
女の子が俺の腕の中をもぞもぞと動いた。柔らかい体がしなやかに下へと移動した。その肢体が俺の体にこすり付けられるだけで気持ちよかった。
女の子の幼い吐息が、俺の首筋にかかった。生暖かい感覚。俺の下半身のモノが肥大した。こんな小さな女の子に、大きくさせられてしまった。
それを感じた俺は、女の子の頭にぽんと手を乗せた。俺なりの忠告のつもりだった。行動をなにひとつ止められない、意味のない忠告だった。
かまわず女の子が唇を這わせた。あむあむと肌を貪られる。小さな舌がなぞる。熱い息が直にかかる。喉が焼ける。思わず息が漏れた。
乗せた手にさらに力を込めた。行為は止まらなかった。
「きもちいい?」
高い声が耳の穴に直接響いた。少し離れたところで様子を見ていた女の子がいつのまにか隣にいた。
耳たぶに吐息がかかり、身震いしそうになる。そのまま唇ではむりと咥えられる。やわらかい唇に捕らえられた部分に湿気のある生暖かさが這い回る。腕の中の子も容赦なくちゅうちゅうと吸い付いてくる。俺は情けなく声を上げた。
「おにいちゃん?」
吐き出された熱い息で耳がぼうとなる。やめろと口にしようとしたが、できなかった。
ついに、下半身を直接的な刺激が襲った。俺の背筋がくの字に曲がった。
見れば、俺と女の子の間に華奢な腕が入り込んでいた。腕の中の子でもなく、隣にいる子でもなく、その逆側で、こっちをぼーっと見上げる瞳があった。
三人目の女の子だった。同じ顔だった。
いつの間に、などと考える暇もなく、その手がもぞもぞと俺のモノをズボンごしに撫でまわした。その動きは遠慮がちだが、俺のモノのかたちを手に覚えさせるかのように、少しずつ確かめるように動く。
「わたひも、する」
腕の中の女の子が、片手を下の方へと伸ばした。
情けなくも声を抑えられなかった。俺のモノを責める小さな手が増えた。幼いその手が、ゆっくりでも確かに俺を追い詰めていった。肥大したモノをふたつの手が好き勝手に犯していく。首を、耳をにゅるにゅると舌が這う。
それもこんな小さな女の子に。あまりに情けない。でも気持ちがいい。一舐めされるだけで、股間の手がもぞりと動くだけで、入れた力がふにゃりと抜けてしまう。逃げようにも動けない。動こうとして動けない。動けない俺に、三人の女の子は柔らかくて小さな肢体を絡めてくる。
頭の冷静な部分を振り絞り、やめなさいという旨を伝えた。何をと返されてしまった。言いよどむ間にも女の子たちは体をすり寄せてくる。思考力が鈍っていく。
こんなことを、とぼかして伝えれば、こんなことってどんなことか聞き返される。わたしはお兄ちゃんにくっついてるの幸せだし、お兄ちゃんも気持ちいいんでしょう? 何がいけないの? と続いた。
この子は敵かもしれない。それにこんな小さな子と淫らな行為に及ぶのは、この国の法律は許していない。
「みていい?」
俺の葛藤なんて知った風もなく、女の子は手を動かす。手際よくベルトがするりと抜かれ、降ろされたチャックの隙間から下着をずらされ、俺のモノが飛び出す。大気にさらされる。かなり頭が悪そうにその棒状のカラダをぴくぴくさせている。
たいした抵抗もできなかった。3人とも俺の充血したモノをまじまじと見つめていた、
「わー」と実際に口にしたのは左の子だった。
すでに犯罪確定だ。こんな幼い女の子に猥褻物を見せてしまっているのだから、通報されれば間違いなく俺の手は後ろにまわる。
もうこれ以上はだめだ。俺の頭が鈍る前に行動を起こすしかない。
「・・・・・・」
俺の股間を撫でていた女の子が、俺のモノを両手で包み込んだ。その刺激を待ちかねていたかのように、陰茎が小さな手の中でびくりと動く。女の子が「あっ」と声を上げた。
切ない感覚が股間から体全体に広がった。きゅうっとなる、いけない感覚だった。耳を舐めていた女の子が「おっきいねー」とひそひそ話をするように俺に囁いた。目の前の子が、俺から離れて腰を曲げた。その顔が亀頭に近づいた。
俺はうめいた。何をされるかがわかったからだ。
俺のモノを包んでいた両手が、ゆっくりと下に動いた。思わず歯を食いしばった。声のかわりに息が出た。その手が上に動いた。俺は呼吸を止めた。
一往復、二往復。くふ、と我慢していた息が漏れ出した。目の前の女の子が口を開いた。先ほどまで俺の喉に這わせていた舌が、その舌が。
「あああああああああああああ!!」
「きゃ!」
俺は後ろに逃げるように立ち上がろうとして、尻餅をついた。今一番敏感になっている部分へ、立ち上がる瞬間ににゅると刺激を与えられて、ぐにゃりと力が抜けた。
離れた。離れられた。
俺は息を荒くしながら、立ちすくむ女の子と、座り込む二人の女の子を見ていた。
その様子を見ながら、ふがいなくも俺は心に刻む。流されちゃいけないと。女の子を傷つけることになろうと、もう近づいちゃいけないんだと。
「おにい、ちゃん?」
不安そうな視線が俺に注がれた。元気な息子を無様に揺らしながらも、俺は出来る限り毅然とした態度を返そうとした。それが女の子に伝わったのが、真ん中の女の子がむっとする。
「いいもん、おにいちゃんがその気なら」
ふわり。
女の子が、さらに能力を発動させた。
「はあ、ふ」
足がもつれそうになる。体力は限界に近い。
女の子はさらに人数を増やして俺を追ってくる。それも全員が全力疾走で追いかけてくるわけじゃない。むしろその逆。
女の子は歩いてくる。こっちに向かって、てこてこと歩いてくる。こちらが必死になるほど速くはないが、気が抜けるほど遅くもない。
例えばたいした幅もない道で自分の前方に歩いている人がいるとする。普通に歩いていると追いついてしまうけど、そのまま追い抜くと長い時間隣を歩くことになるから抜くならちょっと早歩きにしなきゃってくらいの絶妙な速度。
女の子の歩幅を考えれば割と早いのかもしれない。それもただ永遠に直線の続く廊下のような所なら普通に歩いているだけで逃げ切れるが、これだけ狭い部屋となるとコース取りの関係で俺はどうしても大回りを強いられる。本気で捕まらないようにするならば、足を動かすしかない。
「ふう、ふう」
疲労がどんどん溜まっていくのがわかる。
女の子も疲れ知らずという訳じゃない。もう人数を数えることに使える気力もないが、その何人かは交代交代でその場に座り、鬼ごっこを眺めている。
座り込んだ女の子もただ休んでいるわけじゃなく、俺が油断してすぐ隣を通ろうものなら必ず手を伸ばしてくる。ものすごくやわい虎バサミだ。
「くっ」
「あっ」
ばっと自分の腕を振り払う。俺に触れた小さな手が遠ざかる。
完全に逃げ切れているわけじゃない、何度か体に触れられたり、服のすそをつかまれたりもしている。それでわかったことがある。
女の子は、俺を本気で捕まえようとはしてこない。体に触れるのもやんわりと、すそを掴むといってもつまむ程度で、どちらも本気で俺をその場に留めようとしていない。
だから逃げられる。逃げ続けられる。しかし諦めた瞬間に捕まる。一人ひとりは非力でも、一度この数に捕まってしまえば身動きを取れる自信はない。
「おにいちゃん」
何のために逃げ続けるのかもわからない。時間を稼げばこの固有結界は消えてくれるのだろうか。連続して行使できる時間の限界は。
「もう疲れたでしょ?」
「一緒にいよ、おにいちゃん」
「ねえ」
3人の女の子に責められただけであの有様だ。この女の子の海に飛び込んでしまえばどれ程のものが待ち受けているのだろうか。
考えただけで、下半身がうずいた。同時に自分への戒めでもあった。そんなことをしてはならないという、頭ではわかっている世間的な常識だけで、俺はいま、自分自身を繋ぎとめていた。
「はあ、は、ふう、はあ」
連携を取って囲むわけでもなく、それぞれが自分のしたいように俺を追ってくる。そのおかげで逃げられる。そのせいで逃げることができてしまう。体力が尽きるまで、真綿で首を絞めるように追い詰められる。
「くっ、は」
ついに足が止まる。両膝に両手を乗せ、体を支える。意図してじゃない。体が休息を欲しがっている。
「もういいの?」
真下からまんまるの瞳が見上げている。期待に満ちた表情を見せた後、ふふ、と笑いながら抱きついてくる。ふわりと甘い香りが広がる。大人用のTシャツ一枚越しに、柔らかい肌を感じる。
「……っ!」
油断どうこうじゃない。ちょっとでも同じ場所に居れば一瞬で囲まれる。
ぐいとその体を引き剥がす。女の子が「あう」と声を漏らす。しかしさっきまでより力を強く感じる。俺の体力が無くなったのか、あるいはそれを見越してのことか。
「おにいちゃん、おにいちゃん」
「くっ」
体は離せても、いまだその小さな両手が俺にすがり付いてくる。服を掴んでいるその手を、残った力をで振りほどく。
「だめだよう」
「ふふっ」
なんとか距離をとった瞬間、両腕に女の子が飛びついてくる。
「く、はなれっ……!」
両腕を引き抜こうともがくが、簡単にはいかない。
「やあ」
「離さないもん」
腕全体に柔らかい体が密着する。ふわりと甘い香りに包まれる。
「えへへ」
再度目の前の女の子が抱きついてくる。おなかににぐりぐりと頬をこすりつけられる。ふふふ、へへ、と楽しそうな笑い声が響く。
柔らかくて、あったかくて、気持ちがいい。その気持ちよさが、最大音量の警鐘を鳴らす。
「く、ああああああ!!」
「ひゃ」
「んあ」
強引に腕を動かす。相手が小さな女の子だということも考えないで、容赦なく暴れる。
「暴れちゃだめだよう」
「おにーちゃん?」
両腕の拘束が緩んだところに、さらに女の子がくっついてくる。その場から動けていないのだから当然だ。
「はあ、うああ」
結局、両腕の女の子も、引き剥がすには至らなかった。
視界の端で、座り込んだ女の子が立ち上がるのが見えた。俺がもう動けないと判断した女の子が、さらに群がってくる。自分を呼ぶ声と、幼い笑い声が無数に集まってくる。
「おにーちゃん? もう動けない?」
「今行くね?」
「えへへへ」
「触っていい?」
白い天使が体中にまとわりつく。柔らかい体をすり寄せる。どんどん動きが制限されていく。逃げられる可能性が1秒ごと減っていく。
「もう逃げちゃだめだよ?」
「あっ、ああ、あ」
さす、と下半身を撫でられる。逃げつつも履きなおしたズボンの上からだが、しかしぞくぞくする感覚に、力が入らなくなる。
「ふふふ」
「えへへ」
さすさすさす
「あ、あ、あ」
小さな手が股間を這い回る。気付けばワイシャツは取り払われ、下着の奥へと入り込んだ指や舌が素肌を直接嬲る。気持ちがいい。力が入らない。カチャカチャと金具の外される音が聴こえる。
「倒しちゃえー」
もはや自分では立っていることすらままならない俺は、女の子達に簡単に押し倒されてしまう。流れ作業のように、下着も、ズボンもパンツもすんなりと取り払われてしまう。傍から見ればどれほど異様な光景だろうか。大の大人がこれほどまで簡単に全裸にされ、仰向けにされ、可愛い女の子に群がられている。
「いっぱい暴れたおにーちゃんには、麻酔だよ?」
視界が白と肌色に染まる。
「んっ」
「ぐっ……!?」
口が、鼻が、小さな赤いリボンのついた純白の布に圧迫される。
「ほら、ぎゅうううう」
「んんんんっ!!」
俺の顔に跨った女の子は、そのふとももで俺の顔を挟み込む。張りのある肌がぷにゅりと吸い付く。女の子の布越しの秘部へ顔を突っ込んだ状態で固定されてしまう。
「んんっ、えへ、こうするとね、わたしたちでおちんちん大きくなっちゃう男の人は、大人しくなっちゃうんだって」
「んぐっ、んんっ」
唯一の酸素を取り入れる場所を、女の子の部分で塞がれてしまう。なんとか鼻から吸い込む空気は生ぬるく、独特の甘酸っぱい香りが充満している。
「わー、すごい」
「すっごいおっきくなってる」
体の下の方で、驚きと感歎の混じった声が上がる。
「ぴくんぴくんしてる」
「コーフンしちゃってるんだ、おにーちゃん変態さんなんだ?」
「ちっちゃい子のおまたにお顔くっつけておちんちんおおきくなっちゃうんだ?」
「…っ! ……っ!!」
反論にもならないうめき声を上げると、俺に跨った子がくすっと笑う。
「変態さんなんだー? でもね、変態さんじゃないと、わたしみたいなちっちゃい子で喜んでくれる人いないんだ。だから嬉しい。変態さんなおにいちゃんだいすき。もっとくんくんして?」
さらに下着越しの秘部を鼻にこすり付けられる。幼い子の下着や、素肌が、俺の顔面を蹂躙する。女の子が嬌声を上げる。
「むぐ、んあ、……っ、は」
「あ、きもち、ん、おにいちゃん、もっとくんくんして?」
ずるい、わたしも、という声が聞こえてくる。
「こっちのおててもらう」
「じゃあわたしこっち」
言うが早いか、両腕に女の子の素肌がまるごとまとわりつく。だぼだぼの白Tシャツの中で、俺の腕が抱きしめられている。Tシャツ以外女の子は着ていなかったように見えた。つまり裸で直接抱えられてるのと同じだ。
「へへ、おにいちゃんの手おっきい」
「ふふふ」
右手に女の子の両手が添えられ、そこへ導かれる。
「んっ、あ」
俺の手を布の上からソコへと押し付け、上下させる。俺が女の子を愛撫しているのとなんらかわらない状態が出来上がる。俺の手が女の子のいけない部分をさすっている。手のひらにしっとりとした布の感触が広がる。
「はむ、んん」
左手の指がを生ぬるいねっとりとした何かに包まれる。女の子の口だ。右の子とは逆の姿勢で、やわらかい両腕両足でしっかりと俺の左腕を固定している。とても動かせない。
おしゃぶりをするかのように、女の子が俺の指を咥え、そのいたるところを舌でなぞっていく。
「…っ!!」
思わず両手を動かすと、右腕にくっついた子はびくりと体を震わせ、「もっとしてえ」とねだってくる。左腕の子は「んむ」とくぐもった声を上げ、離すまいとさらに俺の腕にしがみつく。
頭がくらくらする。右手で女の子のいけないところをもっと触りたいと思ってしまう。左手の指をもっと舐めて欲しい欲しいと願ってしまう。大人の男が、小さな女の子に顔面騎乗され、吸い込む甘い毒でおかしくなっていく。
「すごいねー、すごいおっきい」
「うごいてる。どうする?」
「どうしよっか、舐めていいのかなあ?」
「舐めちゃお」
「わたしここなめる」
「わたしおなかー」
「ふふふふ」
ぬるり、むちゃ、にゅるる
「っ!! んぐうううううう!!」
「ひゃっ」
女の子達の体で押さえ込まれていた体に、無数の感触が這い回る。体が跳ね、上に乗った女の子が驚く。
「すごおい、気持ちいいんだ? もっとしてあげるね?」
「ここ、なめちゃってもいいのかな」
俺のモノを女の子達が取り合うように舐める。亀頭から竿にかけて、小さな口が幾度と無く襲い掛かる。すでに爆発寸前のモノに強すぎない刺激を与えられて、悶絶する。気持ちよさに悶える。
「んふっ、んっ、ふっ、んんっ!」
体が勝手に動く。よじる。跳ねる。
乳首、胸、おなか。いたるところを女の子の舌が舐る。俺のモノから、睾丸にかけては、もはや女の子の唾液がついてない部分などないほどに群がられている。一番敏感になった部分を、年端のいかない子の小さな舌で好き勝手にされてしまう。気持ちよくさせられてしまう。
「あはあ、いいよお、おにいちゃん。もっとくんくんして? いっぱい気持ちよくなって?」
荒くなった息が、容赦なくその毒素を吸い込む。ふとももと純白のパンツのえっちな香りが、その感触が、俺の脳細胞を壊滅させていく。
あむあむ、ぺろぺろと陰茎を貪られる。限界は早かった。
「んぐあああああああああ!!」
顔、両腕、体。小さな子の行為、その快感と背徳感に、あっけなく弾けた。
わっ、ひゃあと声が上がった。放たれる液体が、女の子を白く汚していった。それもかまわず肉棒へ刺激を咥えられ、残りがどくどくと吐き出されていく。下半身だけじゃない、俺の動かせる筋肉のすべてがビクビクと痙攣を起こした。快感に身震いが止まらない。
射精が止むまで、舌の攻撃は終わらず、俺の体は無様に跳ね続けた。
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「きもちよかったー?」
途方も無い気だるさの中、ぼーっとする意識を、真上に向ける。くりくりした瞳。首をかしげながらこちらを見下ろす女の子は、さっきまで俺の呼吸器の働きを妨害していた子だ。おしりを少し後ろに下げ、今は胸の辺りに乗っかっている。それはそれで息苦しい。女の子の数はいつのまにか減っている。
「……」
まともな返答もできない。ただ、やってしまったという罪悪感だけが渦巻いていた。そもそもなぜ俺はこんな目に合っているんだろうか。
「えへへー、おにいちゃんは気持ちよくなっちゃったから、もうこれからわたしのおにいちゃんね?」
わたしのおにいちゃん。
これほど訳のわからないセリフもないだろうが、この上ないほど冷静になっている俺は、その言葉の意味するところを察する。この子は犯罪グループと間違いなく関係を持っている。少なくとも面識はあるはずだ。この子の言う“おにいちゃん”とは、その異能グループのメンバーを指すのではないだろうか。
「まさか、キミが集めたのか?」
「あつめる?」
俺の問い目を丸くした。それからしばらくして「あー」と思い当たる。
「……ううん、集めたとかじゃないの」
否定したうえで、女の子は「ああでも、そういうことなのかなあ?」と悩む素振りを見せる。俺は説明の続きを待った。
「わたしはおにいちゃんと仲良しなだけだよ? おにいちゃん達が、おにいちゃん同士が集まって何かしてるのは、わたしはそんなに知らないの。今はもう知らないおにいちゃんもたくさんいるよ?」
おにいちゃんがナントカ崩壊を起こしそうだ。おにいちゃんというのはつまり兄であって、血縁関係でいうところの年上の男性兄弟だとかそんなことを再確認する必要はないだろう。そもそもこの子の言うおにいちゃんがそういう意味なら、俺の親には大量の不倫相手がいることになる。生憎、そんな両親のもとに生まれた覚えは無い。
「おにいちゃん達が悪いことしてるのは知ってる」
柔らかい表情には、後ろめたさを感じない。
「でもね、おにいちゃんたちはわたしに優しいの。守ってくれるの。わたしのことをね、幸せにしてくれるの。だから大好き」
言いながら、女の子は本当に幸せそうな笑顔をこちらに向ける。
なるほど、と俺は思った。最初はこの子がその体でもってありとあらゆる異能の男どもを篭絡したのかと勘違いしたが、この女の子は自分が選んで彼らと行動を共にしているだけのようだ。とりあえず犯罪グループはロリコン集団というわけじゃないらしい。そりゃそうだろう、常識で考えろ。
そして無様にもその常識の反例になったのは誰だ。俺だ。
「っはー……」
息を吐き出す。そして情報と呼べるかも怪しい情報を反芻する。
“おにいちゃんたち”との繋がりをあまり強調しないところを見ると、集団、グループとして付き合ってるというわけではなさそうだ。この子はそれぞれの異能者と個人的な付き合いがあって、そのうちその異能者同士が徒党を組み始め、ひとつの集団となり、最近では新たな参入者も見受けられるほど力のある組織となった。こんなところだろうか。
でもそれだけじゃ、このグループが犯罪に手を染める説明がつかない。
「その“おにいちゃんたち”とは、どうして仲良くなったんだ?」
「どうして?」
理由を尋ねる。首をかしげる動作がいちいち可愛い。
「うーん、幸せになりたかったからかなあ?」
「幸せ?」
「うん」
頷いて、女の子は続ける。
「わたしとか、おにいちゃんとか、“力”をもってる人たちって、みんないじめられてるよね? みんなつらいこといっぱいある。わたしもお母さんに捨てられちゃったし」
「……」
「だからね、知り合ったおにいちゃんと『幸せになりたいねー』ってずっと話してたの。『なんでわたしたちだけいじめられるんだろう』って。みんな同じこと感じてた。おにいちゃんはそれをどうにかしようと頑張ってるんでしょ? でもおにいちゃんだって、つらい想いいっぱいしてきたんだよね?」
異能者への世間からの風当たりに例外はない。俺も異能者の立場を良くしようといままで活動してきたが、相変わらず白い目で見られもするし、罵声を浴びせられることもある。何も悪いことをしていなくても、だ。
「わたしのおにいちゃんたちとも、そういうことはたくさん話してきたの。そういう活動をしてる人たちのこともたくさん話したよ? 力を持ってる人たちを守ろうって。でもみんなが本当に思ってるのは、やっぱり幸せになりたいってことなの」
表情に真剣みが増していく。
「おにいちゃんが、世の中のためにやってることは確かにえらいって、みんな言ってる。でもね、おにいちゃんはそれで幸せなの? おにいちゃんがずっと同じことを続けてれば、何年、何十年って先、おにいちゃんが死んじゃったずっと先に、力を持ってる人もみんなと仲良くできるようになってるかもしれない。でもおにいちゃんは?」
その言葉に熱がこもっていく。
「何年もずっと先、会うこともない人のために頑張って、おにいちゃんは幸せなの? なんで同じ人間なのに、こっちばっかりそんなことを頑張らないといけないの? 最初におにいちゃんをいじめたのは、おにいちゃんに迷惑なことをしたのは力を持ってない人たちでしょ? “いま”生きてるおにいちゃんの幸せは? おにいちゃんの人生は? 未来のために犠牲になって、おにいちゃんが死んだ後、おにいちゃんは未来の人にほめてもらえるかも知れない。でも死んじゃった後だよ? おにいちゃんが報われるときに、もうおにいちゃんは生きてないんだよ」
わたしたちは、“いま”幸せになりたいんだと女の子は言う。同じように生まれてきた普通の人と、同じように生きたって、異能があるだけでいじめられる。異能のせいだから、そんな風に生まれたからって諦めなきゃいけないのか。そんなのおかしいと。
「わたしは幸せになりたい。おにいちゃんと幸せになりたい」
俺は女の子の訴えを受け止める。その幸せのためなら何をしてもいいのか? 犯罪を犯していい理由になるのか? しかし犯罪が理不尽だというのなら、先に理不尽な扱いを受けたのはどっちだ。……ひどく考えさせられる話だ。
それでも。
「それでも、犯罪を犯していい理由にはならない、と、思う」
俺の返答に、女の子がむっとする。俺も自分の言葉にそれほど自信がない。こんな小さい子相手に情けない。
「おにいちゃんだって幸せになりたいんでしょ? さっきだってえっちなことされて、すごく気持ちよさそうだったよ?」
「あれはっ……! いや、そもそもなんでキミはあんなことを知ってるんだ」
「おにいちゃんに教えてもらったんだもん」
数時間前の俺であればその男をボロクソに言うこともできたとに、と内心で歯噛みする。
「本当はおにいちゃんにとってはイケナイ事らしいんだけど、ふたりで一緒に気持ちよくなれるのに、なにがイケナイのかわかんない。ふたりとも幸せになれるのに」
この子は親に捨てられたと言ったか。そういった性行為の倫理というか、教育をしっかりされていないのかもしれない。だいたい、異能の力を持った子が義務教育に参加してもロクなことにならない。
俺は親に隠して生きろと言われた。そのおかげで無事に義務教育を終えることができた。しかしこの子の親は早いうちに恐くなってしまったのかもしれない。自分の子供を。
「……それで? 俺にこんなことをして、どうするつもりなんだ? おにいちゃんになれってことは、仲間になって犯罪の手伝いをしろっていうのか?」
確かにイかされてしまったことは認める。非常に情けないが事実だ。しかしだからといって、犯罪に手を貸すってことにはなるわけがない。
「そういうことじゃないよ。本当に良くないことをするおにいちゃんはわたしも好きじゃないの。あのおにいちゃんたちは……、なんていうのかな、他のおにいちゃんからすると『きゅーしんは』って呼んでるみたいで、悪いことばっかりしてるの」
急進派。初めて聞く話に、言葉を失った。犯罪グループとしてその集団を追ってはいたが、その実態は大きな集団の一角に過ぎないということなのだろうか。いわゆる右翼のような派閥が存在しているのかもしれない。この子だけでなく、大きな集団にそういった行動があるのを本意とはしていない者もいるのかもしれない。
じゃあ、どうしてだ。
「犯罪グループの勧誘じゃないなら、なんなんだ?」
尋ねると、女の子はふわりと笑う。
「言ったでしょー? わたしは幸せになりたいの」
女の子は体を少し後ろへ下げると、その身を俺の方へ倒す。突然のことで驚いたが、女の子はそのまま抱きついてくる。
「お、おい」
「へへ」
ぷにゅ、と頬に柔らかいものが擦れる。女の子のほっぺだ。そのまま、大人には無い瑞々しさを押し付けられる。頬ずりされる。
「んん、ちょっとじょりってした」
幼女のひそひそ声が直接鼓膜を震わせて、その震えは体全体に伝染する。思わず力が入る。
「おにいちゃんの能力ってすごいよね? きゅーしんはの人たちも、一番厄介だって言ってた。だって一回でも見つかっちゃったら、顔と能力を知られちゃったら、次に何かしようとしても相性の悪い力を持ってる人が来るんだって。それっておにいちゃんがなかまの人に連絡を入れてるからだよね?」
その通りだった。仲間からは「千里眼」と呼ばれてるこの力を使えば、ある程度の距離までの人探しなんてのは容易だ。現場を押さえることができなくとも、知覚範囲に入ってしまえば相手の情報を一方的に得ることができる。
場所さえわかれば、全方位の知覚を一方向に集中することで、距離を一気に伸ばす事だってできる。これは中高生の頃、好きな子の家を知覚しようとして、一生懸命その方向に意識を向けたことで身についた応用技術だ。理由はアホだが、この頃の一途な努力というのは得てしてとんでもない成果を生み出すものだ。まさか大人になった今、そのときの練習が役に立つとは思っていなかった。
好きな子を知覚できてしまった俺は、結局のところ、その子の状態を視るか視ないかで死ぬほど葛藤し、毎日我慢することになった。良心が勝った。というより単にヘタレだったのかもしれない。
「いくら強いおにいちゃんがそばに居てくれてもね、けんかは起こっちゃうの。力を持ってる人たちって、そうだもんね。でもおにいちゃんなら、わたしをちゃんと守ってくれる。けんかもしなくていいんだもん。どんなに恐い力を持ってる人がいても、見つからなければ大丈夫だよね?」
だから、わたしはおにいちゃんに一緒にいて欲しい。と、女の子は言う。お兄ちゃんと一緒なら、わたしはきっと安心して、幸せになれる。と、女の子は言う。
「おにいちゃんが守ってくれるなら、わたしはおにいちゃんに気持ちいいこといっぱいしてあげる。おにいちゃん、小さい女の子好きなんでしょ?」
「何を、言って……!」
耳元でそんなことを囁かれたのだから、たまったものじゃない。しかしその相手が幼い女の子でもドキドキしてしまってるあたり、俺は救いようが無いようだ。
「守ってあげることは、確かにできるかもしれない、いや、でも、俺には俺の活動があるし、チームには俺が居ないと……」
「わたしみたいな子とえっちなコトしちゃったのに、お友達さんのところに戻れるの?」
「うっ」
本当はしちゃいけないことなんだって、わたし知ってるんだからねー? と、小さな悪魔は怪しげな笑みを浮かべる。
「おにいちゃんのお父さんとお母さんにも、もう会わせてあげない。おにいちゃんはもうわたしだけなの。もし会おうとしたら、今日おにいちゃんがわたしとしたことを全部言っちゃうんだから。わたしのおまたにお顔つけてくんくんしてましたーって」
先生に言いつけるからねー、とでもいいだしそうな勢いに俺は絶句する。
「ね? おにいちゃん、わたしのおにいちゃんになって? いっぱい気持ちいいことして、一緒に幸せになろ?」
逃げ場を塞がれて、俺は返答に窮する。
「わたしももう、今のおにいちゃん達に会わなくてもいいんだ。わたしにえっちなことを教えてくれたおにいちゃんがね、自分じゃキミを守りきれないからって、もし本当に幸せになりたかったら、噂の千里眼のおにいちゃんを頼りなさいって。もしダメって言われちゃったら、いつでも帰っておいでって」
そのおにいちゃんとやらをボロクソ言おうとしたことに、少し申し訳なさを感じた。思ったよりいい奴なのかもしれない。
「あとね? おにいちゃんがもし小さい子が好きそうだったら、こういうことすれば喜ぶよってことも教えてくれたよ?」
撤回。クソ野郎だそいつは。
「『世の中の能力者のために身を削って頑張ってるなんて、絶対クソ真面目な奴だから、既成事実を作っちゃえば、絶対逃げ出さない』って言ってた、よくわかんないけど」
わかんないけど、方法は教えてもらった、と女の子は言った。俺はそのセリフに戦慄を覚えた。
「だからおにいちゃん、きせーじじつをつくろ?」
俺が暴れだす前に、俺の両手両足を押さえつける女の子達が、その力を今一度強める。
「おい、おい待て!」
「やっ」
俺の懇願にも似た訴えをかわいらしく断ると、女の子は俺の頬に唇の感触を残して、体の上を移動していく。
「えっちなことしてからちょっとの間だけ、おにいちゃんたちってすっごく心が綺麗になるんでしょ? そんなときにもっとえっちなことしちゃったら、イケナイコトしちゃったら、おにいちゃんはどのくらいセキニンを感じちゃうのかなー?」
俺の意図に反して固くなろうとするモノを、意思の力で抑え込もうとする。しかし女の子は、あろうことかその上から腰を下ろしてしまう。
「すりすり」
「く、あ、あ」
秘部をこすりつけるようにして、俺のモノを優しく撫でる。
「ん、言っとく、けど、おにいちゃん。本当はダメなんだからね? わたしみたいな子でおっきくなっちゃったら」
女の子はくすくす笑いながら、腰を前後に動かす。
「ほーらほーら、ん、我慢しておにいちゃん。おちんちんかたくなっちゃったら、おにいちゃんがおまわりさんに捕まっちゃうよ?」
すりすりすりすり
歯を食いしばって耐えるが、俺は間違いなく興奮していた。こんな小さな子に股間を弄ばれ、ぞくぞくしていた。
「あ、ぐ」
「あは、あーあー、いけないんだーおにいちゃん」
女の子が腰を浮かすと、俺のモノは情けないほど簡単にその身をびんと立ち上がらせる。恥ずかしくてたまらない。
「おっきくなっちゃったねー、ふふ」
しゅるりと衣擦れの音がする。何かと思えば、女の子がパンツを足首から抜いているところだった。
「ちょ、おい」
「えい」
ぱふっ、と重さの無い感触が俺のモノにかぶさり、すぐに全体を生暖かさに包み込まれる。
「ああ」
「チャンスだよおにいちゃん。いまおちんちんをちっちゃくできれば、まだおまわりさんに許してもらえるかもしれないよ?」
そう言って、女の子は自分のパンツをかぶせた俺のモノを両手でさすり始める。
しゅる、しゅり、しゅるり
「ああっ、かっ、あはあ!」
「ほーらあ、おにいちゃん我慢だよ? おとなの男の人だもんね? ちっちゃい子のパンツになんて興味ないでしょー? これで興奮しちゃったら、変態さんだもん」
女の子の部分を隠していた箇所が、亀頭を包み込んでいる。さっきまでそこに触れていた部分が。
しゅるしゅるしゅる、すりするり
「えへへへ」
「はっ、……っ!!」
生地の温もりがリアルすぎて、まるで女の子の素肌に直接包まれているかのようだ。それそのはずだ、さっきまで女の子の守らなきゃいけない場所を守っていた布で、俺のモノを包まれているのだから。
「もー、おにいちゃん、さっきよりかたくなっちゃってる気がするよ?」
しゅりしゅり
「んな、こと……!」
そんなことあった。俺のモノはすでに真上ですらなく、鋭角に傾き始めている。つまるところフル勃起というやつだった。
しゅるり、すりすりすりすり
女の子は最も肥大してしまったソレを、最も防御力の低くなったソレを、両手で容赦なく攻撃する。
「あ、あ、あ」
イかされてしまう。女の子の手によって、こんな小さな布切れ一枚で。
「ふふふ、これくらいでいいのかな」
しかし、その刺激が決定的となる前に、女の子は手を止める。押し寄せる射精感がすぐに薄れていき、俺は荒く息を吐いた。体全体が脱力する。
「よいしょ、と」
女の子が俺の腰にまたがる。俺のモノの先端が、Tシャツに隠れて見えなくなる。女の子は俺を休ませるつもりは無い。というより、その万人が万人同じ行為を想像するであろう体勢に、俺は本気で狼狽した。
「おっ、おま、それは流石に、おい!」
振り落とそうと体を揺するが、四肢を押さえつけられた状態でできる動きなんて、微々たる物だった。女の子は俺の腰をガッチリとロックしてしまっている。
「いったでしょう? きせーじじつだよ、おにいちゃん」
その頬に赤みがさす。制止する間もなく、女の子がソコにソレをあてがった。
にちゅ
「あああっ!!」
「んんっ」
その入り口へと触れる。絶対に触れてはならない場所へ、俺のモノが触れている。やめさせなきゃ。気持ちいい。絶対にだめだ。すぐに入れられてしまうのだろうか。こんなの犯罪だ。入れたらどれだけ気持ちいいだろう。今すぐ説得して。俺にしかできない経験。こんな小さな子に。こんな小さな子に。こんな小さな子に。
一度に様々な感情がぶわりと吹き出す。
にちゅ、ち、ぬりゅ
「はっ、あああ、あ」
「やっ、ん、ん」
赤黒い先端と、純な入り口が、幾度と無く塗りあわされる。
「やめ、ああっ」
「きもち、ね、おにいちゃん、ああ」
道徳という壁を一撃で破壊してしまうような行為が、何度も行われる。
ぬちゃ、ぬりゅ、り、にゅる
「…っ……!! …ぁっ」
「はああ、んん、きもち、んう」
何度も、何度も行われる。
「もう入れたい? へへ、あっ、ねえ、おにい、ちゃん」
ダメだ。気持ちよくなりたい。それはダメだ。入れてしまいたい。
ぬちゃり、りゅ、にゅら、ぬるる
「はっ、は、はあっ!」
入れたい。ダメだ。入れてしまいたい。ダメだ。
入れたい、入れたい。ダメだ。入れたい。絶対にダメだ。入れたい、入れたい。入れたい入れたい入れたい入れたい。
「ふふ」
嬌声を上げながら、女の子は笑う。その歳に信じられないほど、それはあまりにも艶やかだった。
「おにいちゃんはもう、わたしのもの、だからね?」
女の子が腰をゆっくりと落とす。
俺のモノが、まだまだ年端もいかない女の子の中へと、飲み込まれていった。
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