剣を抜けば壁に突き刺さるだろう。
注文したトーストはバターを塗った面から落ちるに違いないし、ミルクを口にしようとすればきっと床にぶちまけるだろう。なんなら逆立ちをしようとすれば宙に浮けるかもしれない。
そんな、何も手につかない早朝。宿の中。
俺は借りた部屋とホールを行き来し、ベッドに座っては立ち上がり、部屋を出ては入ってを繰り返す。一階への階段はもう三往復くらいしたかもしれない。
こんなに早くからばっちり目が覚めてしまうほどに、俺はたぶん、夜が明けることを期待している。それはきっと明日も明後日も変わらない。
テテアとの約束はお昼。
昼に、また決めた場所で落ち合おうという話になっている。
昼だぞ昼。
あと部屋の中を何週すればいい。
いったい何回、宿の主人に怪訝な顔をされればいい。
「…………っ、ああ、もう」
かっこつけて、また明日、なんてしなければよかった。
宿に戻ってきてから不安ばかりが募っている。
もちろん集合場所は変えた。デカイ樹なんて、下手すれば他の冒険者たちが待ち合わせする可能性だってある。昨日まであのアホのテテアが冒険者に出会わなかったこと自体が幸運だ。
ちゃんと覚えているだろうか。
あのアホのことだから、あれ、ここじゃなかったでしたっけ、なんてケロッとした顔でまた木の下で待っているかもしれない。
見つかって、退治されてからじゃ遅いんだぞ。
エクソシストなんてそうそう遠出するもんじゃないが、いつどこぞの誰かが気まぐれでピクニックをしないとも限らない。悪魔なんて完全に祓われてしまえばそれでおしまいだ。
そうでなくても、一般の冒険者によって裏世界に返されてしまえば、こちら側にもどってくるのは大変だと聞いている。
アホがアホで本当に参る。気が急いで仕方ない。
あいつがもうちょっと頭のいいサキュバスだったら……。いや、もしそうなら俺は普通に戦っているだろうし、もしくはいまごろ全てのレベルを失っているだろう。
たった1レベル。
昨日の、テテアとの、愛の営みの代償。
テテアはあのあともずっと不本意そうな顔をしていたし、なんなら俺も、その、叱られたし。あれがどうしたって悪いサキュバスには思えない。良いサキュバスがいてたまるかという話ではあるけれど、あいつはちがう。アホなだけだ。
「はあ……」
今日は、もちろん会いにいくけれど。
そりゃあまあ別に、故意にサキュバスと接触してはいけないという決まりはないし。
しかしだ。
自制はできるだろうか。
「…………っ」
ぼふん。ばふ。
ベッドに頭から沈み込んで、右手で一発かます。
レベルドレインは受けた。
けれど、あの地獄のような呪いはなかった。記憶は正常。あくまで俺が自分でシてしまった場合のみ起こる現象のようだ。
だから、中毒性があるわけではない。
べつにエッチなことがしたくてテテアに会いに行くわけじゃない。心配だからだ。あいつがアホであることが悪い。だからちゃんと、無事かどうか様子を見に行くだけ。それだけ。
『また、練習の“つづき”、させてくれます?』
「――――ッ」
ああやかましい、やかましい。
テテアが言ってるのはあくまで練習であって、レベルドレインさせろと言っているわけじゃない。あいつの、その、ぱいずりとやらがうまくなるまでの相手をするだけだ。
おっぱいで、挟まれる、練習を……。
「…………っああ!! もう!」
そういうんじゃない。
俺は。べつに。違う。
違う。ただあいつが、ちょっと心配で。
心配で。だから。
その。
ああ、もう。
呪いはもうないのに、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「はあ」
寝返りをうって、力を抜いた、仰向けの視界。天井。
あいつ。ほんとに。
なんでサキュバスなんだよ。ちくしょう。
あいつが普通の人間の女の子だったら俺はいまごろ。いまごろ。
…………いまごろ。なんだってんだ。
こんこん。
「はい」
俺はノックに飛び起きる。
こんな時間に俺に用事がある人間なんてそういないと思うが。ほんの少しでも昼間での暇つぶしができればありがたい。
かちゃ。
「はい」と俺は戸の外を見る。
「……ぁ、あの」と、見たこともない女性がそこには立っていた。
ポニーテールに纏め上げられた清潔感のある茶髪と、濃い色をした蒼い瞳が特徴的だ。
身長は平均的だがシルエットはすらりと細く、やけにつやつやした装備品の種類からして俺と同じ戦士タイプの冒険者とみえる。
「あの、すみません、お休みのところ失礼しますが……」
丁寧な言葉遣いで、彼女は俺の名前を確認する。
確かにそれは俺で間違いないと答える。
「こちらの紹介状をいただいて、ご挨拶にと思いまして」
そう言って、彼女は一枚の紙を俺に差し出した。
正式な印を押された紹介状。
紹介人のところにはおやっさんの名前も連ねられている。
「私はセアリと言います。まだまだ駆け出しの未熟者ですが、早くまっとうな冒険者になれればと思い、ギルドに相談したところ、実力のある冒険者のもとで実戦経験を積んだほうが良いと教えられ、あなたを紹介していただけました」
彼女は少し緊張した面持ちで一息に言ってのけた。
まるで練習したかのような滑らかな口調だ。
俺は頭を掻いてから、ゆっくりと確認を取る。
「えーっと、セアリさん、が」
「はい!」
「俺のもとで」
「はい! そうです!」
「……スー、……なんでまた」
「え、えーっと。あなたには今たくさんの仕事が舞い込んでいて、必ずその処理に追われるはずだとのことで、私も同伴させていただければ一石二鳥とのことでした!」
「……なるほど、なるほどね」
口ぶりからしてさきほどと違い、用意していた言葉とは思えない。
おそらくギルドとおやっさんの会話を横目に聞いていたのだろう。それをそのまま俺に伝えてくるのはなんとも誠実というか、真面目そうというか、言ってしまえば馬鹿正直な子だ。あんまり建前を口にするのは苦手なタイプだろうか。
要は、はやく仕事しねえとてめえプラチナ等級から落ちるぞ。ってな話だろう。
そりゃそうだ。あの呪いのせいで依頼はほぼ手付かず。呪いがようやく解けた昨日でさえも、忙しいはずのその冒険者はサキュバスに会いに行っていた。
…………なかなか、家柄の良さそうな子だな。
俺は容赦なく、彼女を上から下まで眺める。
おそらくまだ等級は高くない。けれど見るからに新品で揃えられた武器防具は、娘の心配をした親御さんが購入したものだろう。それにギルドに融通が利くほどの名家でなければ、いち駆け出しの冒険者がこんな紹介状を書いてもらえることはないだろう。
見張り。兼。催促。
わかったよ。おやっさん。
でも。
「わかった、引き受けよう」と俺は紹介状を返す。
「本当ですか!」
彼女はぱっと笑顔を咲かせ、そしてはっとしたように口元を引き締めた。
「だが、仕事は明日からだ」
「明日から、ですか」
「仕事は基本的にひとりでやってたからな。同伴者がいるならそれ相応の準備が必要になる」
「な、何が必要でしょうか! お供します!」
「いや、今日はゆっくり休んでいてくれ。準備は俺側だけで済む」
「そうですか……」
おれは体よく彼女を追い返す。
悪いが、今日はそれどころじゃない。
ピカピカの装備品が階段を降りて見えなくなるまで見送って、俺はふむと一息つく。
まあ、なかなかに綺麗な子だった。
人間の女性には最近まったく良い思い出がない。その割りには普通に対応できた。
俺があんまり緊張しなかったのはなぜだろう。
そんなことを考えながら、俺は引き続き、太陽が上っていくのを待った。
* * *
「お兄さん! 迷子にならなかったのですね!」
「こっちのセリフだよ」
デカイ樹のある北の平原の、はずれの、そのまたはずれ。
誰にも忘れ去られ、廃墟になった宿屋がぽつんと建っている。正確には、建っているというより朽ちていくのをただ待っているといったほうが正しいか。
俺とテテアの待ち合わせ場所はそのうちの一室だった。
「んふふっ、んふふふっ」
「お、おい」
彼女は喜びを発散するように、俺に抱きついてぴょんぴょんと飛び跳ねた。
押し付けられた乳房がうにゅうにゅと歪んで、俺は紳士的に、言葉を荒げることもせず、突き放すこともせず、静かにその感触を受け止めた。紳士的に。
「さきに、部屋の中をきれいにしておきましたので!」
「お? おお」
たしかによくよく見れば、俺が前に覗いたときよりもだいぶマシになっている。
俺を迎える準備。昨日の夜か、それとも今朝か。
そんなことをするつもりだったのなら、言ってくれれば俺も一緒にやったのに。
「えらいですか? テテアはえらいでしょうか!」
「えらいえらい。えらいぞー」
「でしたら頭を撫でるべきです! テテアがよろこびますので!」
「はいはい」と、俺は右手でなでくりなでくり。
「へへへぇ」
猫のような甘えっぷりに、胸がぎゅっとなる。
無事でよかった。
悪魔とはいえ、サキュバスなんて悪魔種の中じゃ最低レベルのカーストに位置しているだろう。魔物同士で争うことはあまりないと聞くが、そこらへんの魔物一匹にすら勝てないんじゃないかと思う。
それこそ純粋な戦闘力でいえば、魔術師をほんの少しかじっただけの女の子とそう変わらない。
「テテア」
「はい、なんでしょう?」
テテアは大きすぎる胸を目一杯おしつけたまま、きゅるんとした上目遣いを見せる。
ほんとに、カラッと揚げて食べたろかと思う。
「お前はいまどこに住んでるんだ?」と俺は尋ねる。
「テテアです? ……う〜ん、だいたいこの辺って感じでしょうか?」
「このへん?」
「このへんです。お兄さんと会った洞窟とか、草原とか、向こうの、林のほうにいたりもしますね。そのときの気分だと思うのです」
「寝るとき困らないか?」
「悪魔は眠りませんので」
「ああそうか」
基本的なことを見落としていた。そういえばそうだ。
悪魔である彼女たちに人間のような生理現象はない。そんな当たり前のことに気付かなかったのは、俺がテテアをあんまり悪魔として見ていないからだろう。
「ほかの冒険者に出くわしたりしないのか? 危ない目にあったり」
「冒険者さんです? そうですねえ、探してはいたのですが、テテアの探し方がよくないのでしょうか。あんまり会ったことがないのです。街デビューはまだまだ早いですし」
街デビュー。
人間の集まっているところに潜り込むのはサキュバスとしても難易度が高いということか。まあ確かに、周りはエサだらけではあるけれど、敵だらけでもある。
……あの街にもすでに1匹2匹、潜んでいたりするのだろうか。
あ。
そういえば街中で見つかったサキュバスが退治されたなんて話も定期的に聞く。
あれはこのことだったのか。
あまりにも身近な話題すぎて頭の中で繋がらなかった。
「……まだ冒険者を探してるのか?」
「テテアがです? そんなわけないじゃないですか。テテアにはお兄さんがいますので。これはもう運命の出会いなのです!」
「……、……冒険者を探してないんだったら、あんありフラフラするなよ?」
俺が小言を口にすると、テテアはきょとんとしたあとに、口端を上げてニタァと笑った。
「……お兄さん、テテアのことを心配していますね?」
「いやっ、べつに」
「冒険者さんが、サキュバスの心配をしているのですね?」
「チガイマス」
「んふふふふっ、んふふふっ。テテアはしあわせモノなのですね〜」
テテアは歌うように口ずさみ、前髪をぐりぐりと押し付けてくる。一方的に納得されてしまってはこちらも否定のしようがない。俺はくすぐったいお腹の感触に、奥歯を噛み締めた。
ああ、もう。
可愛い、アホめ。
「ねえねえ、おに〜ぃさんっ、おにぃさんっ」
甘さとあざとさを凝縮したような猫なで声で、テテアが俺を見上げてくる。
「な、なんだよ」
「んふふふ。きょうのぉ、ぱいずりのぉ、れんしゅう。させて、ほしいなぁって、おもうのですが……」
「……わ、わかったよ」
「んへへぇ。わーい!」
満面の笑み。テテアは小柄な体を揺らす。
うにゅうにゅと押し付けられる感触。俺は力が抜けそうになりながら、ベッドへと向かう。
* * *
「いきますよ〜。……は〜い」
「……ぅ、ぁ」
温かい液体に包まれるような、柔らかすぎる感触。
当たり前のように衣類を脱いで、当たり前のようにテテアの膝に腰を乗せて、当たり前のように陰茎をおっぱいに挟まれる。サキュバスのおっぱいに。
「……ぁっ」
ぴくん。
もはや取るに足りないほど小さくなってしまった、わずかな良心。冒険者としての危機感。それが心をちくっと刺し、弱い背徳感が背中を抜けていく。
「んふふふふふ」
むぎゅ、うぎゅ。
「ぁ、ぁ、ぁ」
強く圧迫されるだけ。ただそれだけ。
あまりにも無防備な男の弱点が、サキュバスの乳房で焦らされている。
はぁ、あぁ。
彼女がサキュバスであることを意識するほど。イケナイ、イケナイと思うほどに陰茎は強くそそり立ち、身動きの取れない乳房の中で大きく脈動する。
逆に言えば。
わざと自分たちの立場を考えるほどに、全身を黒い快感が襲ってくれる。
サキュバスのおっぱいに捕まってしまった、冒険者の、俺の陰茎。
それを、良しとしている俺。
抵抗しない俺。
こんな弱い悪魔の、快楽に負けてしまった自分。
ああ、ああっ。
「えへへ、気持ちいいですかぁ?」
パイズリの準備と称して、さんざんテテアのおっぱいに挟まれた顔は、頭は、もうまともに機能していない。まだあの感触が頬を覆っているかのようで、ふわふわと視界がぼやける。
すりすりすりすりすりっ。
「ぁ、あぁ、あ、あっ」
「んふふふふふ〜」
もう何度目かもわからない、腰が砕けるほどの快感。
膝の上で、腰が跳ねる。でも跳ねられない。ぜんぶおっぱいに吸収される。
逃げ場を鳴くした下半身。逃げようとしない俺。
火遊びを覚えてしまった頭が、どんどん彼女を敵にしていく。
俺はサキュバスのおっぱいに負けてしまった冒険者。
俺はサキュバスのおっぱいで虜にされてしまった冒険者。
むにゅぐにゅ。ぐりりん。
「ああっ、んふっ、ぅあああっ」
サキュバスに負ける。
悪魔に負ける。
敵に負ける。
気持ちいい。
「テテアのための練習ですけど、きもちよーくなっちゃそうでしたら、いっぱいきもちよくなっちゃっていいですからね〜」
ずりずりずりずり、ずりゅん。
――――――ッ!!
ほこりっぽいシーツに指を立てる。
軋む木製のベッド。
穴の開いた天井に響く、情けない男の声。
あはぁ、あああぁぁぁ。
テテアのおっぱい。
ああ。しあわせ。
「あ、そうだ、お兄さん!」
「ぁっ」
ひたりと止められた乳房の動き。
ところどころで、勝手に力の入っていた体が、でろっと泥のように弛緩する。
「お兄さん、お兄さん、お願いが、あるのですが……」
「はぁ、はぁ、……んぁあ。……ぁ。ぁに?」
「きょうはちょっとお兄さんに、わるい子のフリをしてほしいのです」
「はぁ、へぇ? ぁるい、こ?」
「そうですそうです。わるい子です。お兄さんはこんなテテアを信じて、テテアの練習に付き合ってくれているとってもいい人なのですが、お友達のお話を聞くと、たま〜にいるそうなのです。サキュバスに本気で恋をして、だめ〜になっちゃうわるい子が」
「……っ!」
「なのでぇ、テテアも男の子に好きになられちゃったときのために、お兄さんに演技をしてみてほしいのです!」
「……え、えんぎ?」
「そうです、演技です。フリです。テテアのおっぱい大好き〜って、もっとして〜って、とろとろ〜になっちゃった男の子のフリをしてみてほしいのです。もっと勉強したいので」
「……はぁ、はぁ、そ、そんな」
「できたらでいいのです。いきますよぉ、……ほら」
ずりゅん。
「ぅあっ……!」
「んふふふ。テテアに恋しちゃったおちんちん。すりすりすり〜」
すりすりすりすりすり。
「ぅあ、ぁ、あっ」
「ほらほらぁ、どうですかぁ? テテアのおっぱいはどうですか〜?」
さっきよりも強く、陰茎が擦られる。
腰が抜けそうなほどの快感。目の前がまた、白みがかってくる。
ああ、きもちい。きもちいい。
ああ、ちょっと。
ちょっとだけ、口にする、くらいなら。
「ああっ、あ、きも、ち、ぁ、きもちいっ」
「ああぁ……っ、そうです、そうですぅ、このまま強くしていきますね〜?」
「うぁああ、ああっ」
ぐりゅいん、ぐりゅいん。円を描くようにこねられる。
刺激が強くなった、わけじゃない。
おっぱいが柔らかすぎて、硬くなりすぎた陰茎はビクともしない。ただただみっちりと。あらゆる溝まで余すところなく、全てを埋め尽くす。
「あは、んふっ。すなおなおちんちんさんが、テテアのおっぱい好き好き〜って言ってますねえ。ぴくんぴくん、ぴくんぴくん、って。んふふふっ。ほらほら、おっぱいさんですよぉ。今日もわたしといっぱいエッチしましょうねえ〜。おちんちんさんのだーいすきな、おっぱいエッチですよぉ」
すりすりすりすり。
すりすりすりすりすりすりすりすりすり。
「ああ、がっ、い、ひっ、いいっ、きもちいいっ、それ、あっ」
「あ〜、お兄さんまで、すなおさんになっちゃいましたね〜? サキュバスのおっぱいできもちよくなっちゃうわるい子さんですね〜? おちんちんに、おっぱいでぇ、めっ、てしちゃいますよ〜? ほらほら、いけない子ですよ〜?」
ずりゅんっ、ずりゅんっ。
「てっ、……アッ、テテアっ、テテアァッ!」
「なんです、なんです? お兄さんどうしましたかぁ?」
「きもひっ、きもちっ、きもちいぃ、い、からぁっ」
「んふふふふっ。お兄さんは演技がおじょーずですねえっ」
ずりゅ、ずちゅん。
ずりずりずりずりずりずりずり。
「それっ、アッ、きもちっ、きもちいぃよおっ、ああああっ」
あああ、ああ。
ちょっと、の、演技のつもりだったのに。
演技で、いられなくなっていく。
口に出せば出すほど、気持ちが状況に乗せられていく。
ほんとに、ほんとに。
テテアのぱいずりが。
「す、ヒッ、ア、すきっ、それ好きッ、テテアっ、ててあぁっ」
「えへへ、なんですかぁ? なにが好きなんです〜?」
「あ、あ、あっ」
言い、たくない。
そんなの恥ずかしい。
でもいまの俺は、テテアのおっぱいに恋をしちゃった男の子だから。
だから、だから。
これは、演技だから。
「ぱっ、ぱいずりっ、すきぃっ、ああっ、すきっ、テテアのぱいずり……ッ」
「ああん、お兄さぁん、ぱいずりなんてえっちな言葉、どこで覚えちゃったんですかね〜? 勉強熱心なえらい子は、い〜っぱい褒めてあげないとですよね〜? おててのかわりに、テテアの舌で頭をなでてあげますからね〜。あー……」
にちっ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」
暴れようとする腰は、膝とおっぱいにみっちりと挟まって動くこともできない。
脳裏に浮かびかけた天国は白色。
入り口はすぐそこ。
戸を叩くかのように、腰の代わりに、陰茎がびくびくと脈動する。
ただただおっぱいの中で、まともに跳ねることもできずに。
びくん、ひく、ひゅく。
「きもひ〜でふ? んふふ、ひゃあ、このままイっひゃいましょ〜ねぇ?」
「それだっ、それだめっ、だめっ、ああ、あ、あ、いっちゃう、いっちゃうっ」
にるにるにるにるにる。
あ、あ、あ、あ。
イく。イっちゃう。
きもちいぃよお、ててあぁあ、きもちいぃいよおお……っ。
「きもち、ひぃ、てへぁ、あ、きもひぃよお」
にりゅにりゅにりゅにりゅ。
にゅるん。
あ、あ、あん。
でう、でる。でるう。
ああいく。ててああ。
あああああああっ。
「んむ」
「ぁっ」
空へ上りかける瞬間。
浮力を失う。
取り残されたのは無様にヒクつく陰茎と。
俺自身。
「んふ、どうしたんですかぁ? お兄さん」
テテアは前かがみのまま、にやぁと目を細める。
嘲笑を含んだ口元が、いまかいまかと獲物を待っている。
わざと。わざとだ。ああ。
むり、むり、むり、こんなの。
「ああっ、はぁっ、いかせてっ、いかせてぇえっ……!」
言ってしまった瞬間。
テテアがいままでにないほどに淫猥な笑みを浮かべる。
ゾッとくる腰の痺れ。
出させてくれる。
射精させてくれる。
テテアの表情にそれを確信する。
ああ、ああ。
「にゅふっ、んふふふふっ。なんですかぁ、お兄さん」
「イきたいっ、いきたいからぁ、ぱいずりして、はやく、ぱいずりしてぇっ」
「ぱいずり、ですぅ? テテアよくわかんないです〜、んふふふふっ。でもぉ、すなおなお兄さんにはな〜んでもシてあげたい気分ですねぇ」
「あ、ぅあ、お、俺のおちんちんを、てっ、テテアのおっぱいで挟んで、すりすりってして、すりすりって、すりすりすりすりって、いっぱいして、おねがい、おねがいいっ」
気持ちが演技を追い抜いていく。
俺は俺自身。
いまテテアに、無様に甘えているのは、俺。
テテアのおっぱいに恋しちゃった俺。
「んふっ、んふふふふふふっ。はあぁ、そ〜んなにテテアのおっぱいが好きならぁ、シてあげてもいいですよ〜?」
「すきっ、すきぃっ、テテアのおっぱい大好きっ、だいすきいっ、おっぱい好きっ、おっぱいして、おっぱいしてぇ」
「はぁ〜い、おっぱいしてあげましゅね〜」
すりすりすりすりすりすり。
「あああああああああああああっ」
上りかけの身体はすぐに雲を抜ける。
腰の切なさと一緒にふわっと浮いて、浮ついていく。
「ん、んむ」
にちゅ。
にちにちにちにちにち。
「あっ、あ、あ、あ、あ」
おっぱいの動きと一緒に加えられる舌の動き。
ぱいずりと、おくち。
大好きな子の、おっぱいと舌。
好きがたくさん。愛が飽和する。ぱんぱんに膨れ上がって、腰が弾けそう。
「きっ……!! きもひっ! んああっ! すき、すきいっ! それしてぇっ、ずっとして、ずっとしてっ」
「あむん、んむ、んふ、んふふ」
テテアの口から送り込まれた愛で、陰茎が溢れる。
もうこぼれる。
テテアの愛情で溢れてしまう。
ああ、ああ。
「いきまひゅお〜? ……んっ」
ぢうううううううっ。
あ、あ。
あいく。
あそれ、あ。
あ、でる。
だめそれ。
ぬける。ぬかれる。ひっこぬかれる。
根元が、抜けて。
ああ。
「はいっ、おしまいで〜す」
ぱっ。
と放られた虚空。
自分の居場所も掴めない、空と天国の間。
どこまでも白くて、どこまでも黒くて。
けれど。
マグマのようにせり上がってくる、何か。
はるか地面から、ごおおと音を立てて。
焦燥。
焦れ。
ああ、あああ。
「んふっ。お兄さんの演技のおかげで、たくさん練習させてもらっちゃいました!」
ちがう、ちがう。
ちがうちがうちがう。
「とってもいい演技でした! おかげですごくいい練習になりましたので。お兄さんはどこかで演劇をさえていらっしゃったのですかねぇ? んふふふ」
やだ、やあ。やら。
ひきた、ひ。いきた。
ああ、ああ、あああああああ。
「いきたっ、いきたいいっ、んぇえ、へ、てへぁあ、ぇああっ」
「んう〜? どうしましたぁ? 練習はおわりですよう?」
やだ。いやだ。
ててあ、わかってる、くせに。わかってるくせに。
「いい、ひっ、いいから、れべっ、れべるどれいんっ、して、してして、ててあ、ああっ」
「あれれ〜? んふふふふっ。演技のお時間はおわりなのですけどね〜?」
朦朧とした意識に。
テテアの染まった頬が映る。
くりくりの瞳がいまはぎらぎら光ってて。
悪戯な笑みから白い歯が見えていて。
俺は。
涙が出そうなほどに。
安心する。
「いいっ、いいいっ、いいの、いいから。ぱいずり。ぱいずりでうばって。れべるどれいんして。はやく、はやくはやく。おっぱいでだしたいいぃっ」
「はぁあ、んんっ。そんなぁ。テテア、そんなつもりじゃなかったんですよぅ? はぁ。だめなんですよう? お兄さんはぁ、冒険者さん、なんですからねぇ?」
「いいっ、いいからぁっ、すきだから、すき、すき、ててあすきぃっ」
「はぁ、はぁ……っ。それじゃ、いい子、できますかぁ? お兄さん、テテアのおっぱいの中でいい子、できますか? ぴくんぴくんって、いっぱいできますかぁ?」
「する、するからっ、ほら、ほら、ほら」
びく、びゅくん、ひくひく。
「あっ、あああぁぁぁ、かわいいぃ……っ。ほらほら、ぎゅうううってしてあげますかあ、テテアがおっぱいすりすりしてる間も、それちゃんと続けるんですよぉ? できますか? お兄さん、いい子、できますか〜?」
「でき、ひ、できる、できるう」
ひくひくひくひく。
「あ、あ、あ、じゃあもらっちゃいますねぇ、お兄さんのおちんちん、テテアがい〜〜〜っぱい褒めちゃいますねえ。褒め褒めしちゃいますねぇ」
ぎゅむん。
すりすりすりすりすりすりすりすり。
ああ、あ、あ、あ、あ。
いい子する。いい子するう。
びく、びくん。ひくっ。
ああや、ば、これやば、きもち。あ。
でる。すぐでるぅ。
「ほらほらほら、レベル出ちゃいますよぉ〜? いい子してくださいねぇ〜?」
いい子する。いい子できてしまう。
いい子になる。テテアのおっぱいでいい子になる。
ひく。びく。びっ。びく。
あたまがばかになる。
ちのうもちからも、とけだして、ぜんぶおちんちんにたまってく。
でちゃう。おれのれべる。
ああ、あ。
「ああ、はぁ、出ちゃいますね? いい子、いい子ですね? テテアのお口で、頭なでなでしちゃいますからねっ? いきますよ、いきますよぉ?」
「ああああっ、あ、あ、あ、あああっ」
ひくっ、ひくひくひくひくっ。びくんっ。
「あはっ、いい子でしゅねえ〜〜〜〜〜〜っ!」
にるにるにるにるにるにるにるにる。
――――――――――――――――――――あ。
びゅくびゅくびゅくびゅくびゅくびゅくびゅく。
びゅるるるる。
――――――――――――ああ、あ。
びゅくびゅくびゅく。
びくん。
――――――あ、あ、あ、あ。
「んっ、んふっ、んむ」
ぢううううううっ、ぢゅうっ。
どくどくどくどくどく。
どくどく。どぷ。
あっ、……あっ。……あっ。
出る。出てく。
あたまいっぱい、ててあのお口でいい子いい子されて。
ぜんぶ出てく。抜けかけの根っこもぜんぶ引っこ抜かれて。
ぢゅううううううっ。
ああんっ、ああ、あ。
でゅるるるる、びゅう。
第二波。押し寄せる天国。
いい子になっていく。テテアのおっぱいにいい子していく。
すりすりすりすりすり。
にるん。
トぶ。空高く飛んでいく。真っ白な世界。
腰から下が破裂して。なんにもなくなって。はじめていける場所。
しゅり。しゅりん。
にちゅ。ちゅう。
「……あは、あ、んあ、……ぁあ」
峠を越えた陰茎が、それでもまだ、優しく愛される。
丁寧に丁寧に、優しく。
陰茎が敏感になっていくほどに、それに合わせるように。
弱い弱い、俺のおちんちんに合わせて。
聖母のような慈愛で。
しゅり。
ちう。
おっぱいが穏やかに止まって。
先っぽにキスをされる。
小さな子供に、愛の祝福を贈るかのように。
びゅくっ。
「あ」
最後まで抵抗していた、ひねくれた残党までも。
彼女の愛に溶け、導かれてしまう。
陰茎の先っぽから。腰の奥まで。
ぜんぶテテアが好き。
ビンと張った足の先から。あまり手入れもしてない髪の毛の先まで。
ぜんぶテテアが好き。
俺というイキモノが。テテアを好き。
ひくひく。ひくん。
すき。すき。テテア、すき。
ひくん。ひくん。
だいすき。だいすき。
働かない口のかわりに、俺はテテアに恋を伝える。
おっぱいの中に、大好きと、ありがとうを伝える。
ひくん。ひくっ。
ひゅくん。
――――――――――――――――――。
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