「メルちゃんは今日、おつかいの当番なんです」
「おつかい?」
「はい、勇者さんがいらっしゃってから、料理を作る必要が出てきましたので」
ベッドの上にあぐらをかいた俺。小柄なサキュバスはその膝の上で、俺を見上げながら言う。
「なるほど、ね……。それはそうと、ずいぶん近くないか?」
「はい?」
「積極的というか」
体を隠す少ない面積の布、密着する体。最初の日に、メルの後で遠慮がちにしていた子とは思えない。
「……はい、最初はちょっと怖かったんですけど、勇者さんがやさしい人だってわかりましたから」
昨日の勇者さんは、その、可愛かったです。安心し切った表情。頬を少し染めてそんなことを言う。心外だと言いたい。俺のどこにやさしさ要素があったのか知らないが、魔物にそんなことを言われてしまうのは、勇者としては激しく間違っている気がする。
「今日はメルちゃんがいないので、独り占めさせて下さい」
語尾が可愛らしく跳ねる。頬がさらに染まる。その笑顔に、胸の奥が小さく鳴いた。
今日。起きてみれば白。あたり一面の白。
覚えのある柔らかいベッドの上で軽いデジャブに頭を振り、意識が落ちる前のことをよくよく思い出し、元気にアサダチしたモノに余分な血液を送った。
メルの姿もミルの姿もそこにはなく、ついでに両手両足の拘束もなかった。
自由だ。最初にそう思った。裸だったのも影響したのだろう。妙に開放的な気分だった。寝覚めもよかった。
俺は走った。裸で走った。ぺたぺた音を立てながら、洞窟の入口めがけて、もつれそうになる四肢を必死に動かした。方向感覚はさび付いていなかった。
走り、走って、そしてたどり着いた入口の封印を、俺は解くことができなかった。何をしてもダメだった。魔法力は遮断され、殴る蹴るなどの暴行を加えてみても、その魔方陣はビクともしなかった。そのうちうしろから「だめじゃないですかー」なんて声をかけられ、俺は眉間に皺を寄せ、苦笑する小柄なサキュバスへ振り返った。やはり胸が大きかった。
「メルちゃん、たぶん夕方には帰ってくると思います」
連れ戻された部屋、ベッドの上。
小柄なサキュバス、ミルはそう言った。俺は「へえ」とだけ応えて、黙り込んだ。時間の感覚がない俺には、「ああ、今は夕方より浅い時間帯なのか」ということしかわからない。
結局、逃げられなかった。外に出ることはできなかった。それもそうだろう。あの封印が簡単に解けるのであれば、俺の手足の拘束を外すわけがない。
何がしたいんだろうか。わざと希望をチラつかせて、大きな絶望を与えたかったのだろうか。逃げられるわけなどないと、深く刻み付けるために。
「……」
黙ったままミルを見下ろす。見上げてくる幼い顔立ちには悪意のかけらもない。メルにしろこの子にしろ、そんな目的で拘束を解くような性格とは考えづらい。
「……いいのか、そんなに近くに居て」
「はい?」
ミルが首をかしげた。
「魔法が使えなくても、握力はちゃんとあるぞ。その細い首くらいなら」
俺はベッドについていた右手をあげてみる。
ミルはきょとんとした。しばらくしてから突然くすくす笑い出し、俺の胸に頬をこすりつけた。ふにふにの感触が地肌を滑る。
「殺すんですかあ? わたしを」
あまりに物騒なセリフは、あまりに幸せそうな笑みから発せられた。垂れきった目尻からは、俺の言葉に対する畏怖、緊張が微塵も感じられない。
「……できます?」
薄く開いた目はなめらかな孤を描き、どこか挑戦的で、それでいてドキっとするほど“女”を感じさせる。肺が活動を一時停止する。たまらず目をそらす。ミルが肩を揺らした。
「ふふふ、勇者さんはやさしいですから」
ですから、無理ですよ。暗にそういわれた気がした。
悩みの種は確かに多い。この子達を殺したところであの封印は解けるのだろうか。もし本人達にしか解けないのであれば、どうにもならなくなってしまう。ならば脅して無理やり開けさせるか。どうやって。
力で? 暴力で?
俺に、例えばこの子、ミルを殴れるか。俺に体をあずけて丸まってるこの子を瀕死になるほど殴打して、メルを脅迫して封印を解かせる。それができるかどうか。
「やさしい、ですから」
愛おしそうに頬をすり寄せながら、ミルは言う。
見透かされている。恐らく俺にそれはできない。
敵であるはずのメルもミルも、俺を殺そうとする気概がまったくない。だから、俺がどれだけここに滞在しようと、命を落とすなんてことはまずありえない。そんな打算的な部分。
そもそも、この子達が俺にしてきたことは「攻撃」と言えるか。十分以上に食事を与えられ、気持ちよく寝られる場所を与えられ、恥ずかしながらも幸せの極地と言えるほどの淫らな快感を与えられて。これで、危害を加えられたと言えるか。たとえ脱出するためだとしても、仲間の元に戻るためだとしても、本気で命の取り合いをする相手だと心に決めることができるか。非情になりきれるか。そんな感情的な部分。
もうすでに術中なのだろうか。この子達の。
頭を振る。なんにせよ、脱出はしなければならない。できれば平和的かつ迅速に、だ。
「でも、もし」
ミルが口を開く。
「もし、本当にわたしを絞殺する気が起きたとしても、多分もう、勇者さんには無理ですよ?」
「え?」
「んしょ」
ミルが俺の肩を掴んで身を起こす。布に包まれた豊かすぎる双乳が目の前だ。俺は昨日、このおっぱいにダメにされた。
「例えば、ほら」
むにゅり。
ミルの両手がそれを両側から押しつぶす。覆っているだけの布は浮き、柔らかい肉がとろけるようにはみ出す。
「お、い」
むに。
今度は上下。乳首は布の端に引っかかり、その突起を浮き上がらせる。見えそうで見えないが、今にもおっぱいごとぷるんと落ちてしまいそうだ。
「ほらほらあ」
むぎゅ、むにゅ、ぷに。
柔らかさのかたまりが形をかえる。そのたびに突起は動き回り、引っ張り、淫らな線を浮き上がらせ、布を困らせる。今にも見えてしまう。目の前。このおっぱいで顔を包まれて、俺は。
「ほら勇者さん、動いてみて?」
その言葉に体がびくりとする。
口が開きっぱなしだった。溜まっていた唾液を飲み込む。頭がさえない。声をかけられなければ、恐らくよだれでも垂らしながら、目の前の柔らかいおっぱいをずっと眺めていたかもしれない。
「……くっ」
その露出された両肩に触れる。やけに腕が重い。すぐに、突き放さないと。
「ほら、勇者さん」
むにゅ。
形を変える膨らみに、またしても視線が引き戻される。見てしまう。見たい。
「寄せてみたり」
谷間が深くなる。この谷間に挟まれて、俺はダメにされてしまった。見てはいけない。いけないのに。
「つぶしてみたり、ふふ」
指が沈む。その深さに影ができ、指の間からは柔肉が溢れようとする。ものすごい柔らかさ。知っている。俺はこのおっぱいの柔らかさを知っている。
「揺らしてみたり」
軽く持ち上げ、手を放す。ぷるりと落下して、震える。下から溢れた乳が水のように波うち、突起は布に引っかかり、寸でのところで零れ落ちない。
「……は、あ」
「もーいっかい」
ぷるるん。
突起はさらにズレる。次は見えてしまうかもしれない。きっと見える。
「もういっかい」
ぷるるりん。
やはりギリギリで引っかかる。見えてしまう。次は絶対に見えてしまう。生のおっぱいが見えてしまう。
「ほら、どうですか? ふふふ」
ぷるん。
「はあ、は、はあ」
それでも引っかかる。見えない。
くそう、見えない。でも次はきっと。間違いなく。はやく、もう一回。もう一回やれば。
「ふふふふ」
さらに高く持ち上げる。これなら間違いなく布が外れる。ついに見れる。見たい。見たい。ああ。
「勇者さん、力が入ってないですよ?」
「あっ、……ぐっ」
あごから喉にかけて唾が溢れ、流れ出る。腕がひたすら重い。その小さな両肩をほんの少し押せばいいだけだ。それでこの子はベッドに倒れる。それだけでいい。それだけでいいのに。
「うまく動けないですよね? ふふ、いま拭いてあげますね」
ただの棒と化した俺の腕を押しのけて、持ち上げられた谷間が迫ってくる。目下に肌色が広がる。
ふにゅ。鼻から下が肉に埋まる。
「んふ、んっ」
綺麗にしましょうねー、とすべすべの布地でよだれを拭かれる。凶悪な柔らかさはもちろん、見えず仕舞いだった内側の突起も、さらには面積の少ない生地からはみ出す肉も直に擦り付いてくる。
「んあ、ふ」
「念入りに拭き取っておきますね、ふふ」
すり、もにゅ、ふに。
あ、あ。またダメになる。このおっぱいにダメにされてしまう。ダメになってしまいたい。
「んんんっ!」
「ひゃっ」
自ら飛び込む。柔らかい肌色の谷間に鼻が沈む。頬が沈む。意識が沈む。その背中を抱いて引き寄せる。もっと押し付けられてしまいたい。もっと埋まってしまいたい。
右へ左へ、おっぱいを掻き分けて奥に進む。情けない声を上げながら、子犬のように甘える。
散々おあずけされたご馳走にやっとあり付ける。ああ、これだ。これが俺を弱らせて、腐らせて、気持ちよくしてくれるおっぱいだ。
離れたくない。回した腕を引き寄せて、窒息しそうなほどに埋没していく。肌に埋まる。いけない場所に迷い込んで、もう出てこられない。
「ふふふ、もう、勇者さんだめじゃないですかー」
細い指が俺の髪を通る。胸に埋もれた俺の頭を優しく抱く。毛繕いをするように撫でられ、あやされる。
ああ、いい。
「よしよし、いい子ですねー」
顔が気持ちいい。柔らかい体が気持ちいい。髪を撫でられるのが気持ちいい。谷間の中の甘い香り。腐っていく。男が腐って、よれていく。精神、俺の人間としての太い柱が桃色に包まれて縮んでいく。細く、弱く、ぐにゃぐにゃになって。
「よーし、よし」
ああ、だいじょうぶ。弱くなってしまった俺の全てを任せて、この子に守ってもらえる。だいじょうぶ。このまま、幸せなまま、えっちなまま。全てを、任せて。
「そんなに落ち込まないでください」
苦笑しながら、ミルが言う。
「……もう俺はだめだ」
俺は布団に包まる。もう出たくない。
痛いほどわかった。俺にこの子達は殺せない。ガチの戦いに持っていくことすらできない。
心が負けてしまっている。おっぱいに負けてしまっている。
「でもでも、まだレベルを吸われちゃったわけじゃないですから」
不甲斐ないなんてものじゃない。もうお外は嫌だ。おっぱいしかない。あの二つの膨らみは俺を幸せにしかしない。柔らかい肌は、谷間の中のえもいわれぬ心地は。小さな突起は噛み付きたくなるほど恋しく、一度それにあり付けたら自分を捨ててでも欲してしまう。眉間に皺を寄せ、感嘆の息を吐くほどの魅惑。全ての男が求める肉。俺だけが、俺だけに与えられる、俺だけが好きなだけ貪れるおっぱい。素敵すぎて、ダメすぎる。
気を落としながらそれでも陰茎をでかくする俺が、ミルに慰められている。酷い図だ。
「出てきて欲しいです」
「……」
外からぽふぽふと触れられる。
引きこもっていることすら情けない。でも、どこにも逃げ場はない。俺が一人の男として、その誇りを胸に、凛として立っていられる場所はもうここにはない。
おっぱいがいけないんだ。あのおっぱいが。あの肉のせいだ。おっぱいがおっぱいであることが問題なんだ。ちくしょうあのおっぱい。なんていいものなんだ。
「勇者さーん」
……はあ、そろそろ潮時か。
もそりと顔半分を出す。それを確認したミルは顔をほころばせ、頬を染めた。小柄な女の子が、その胸部に女の魅力をたっぷりと実らせて、俺のことを心待ちにしている。肺のあたりがくすぐったい。ふわふわのベッドの上。
こんなの、堕とされても仕方ないってか。そんなわけあるか。くそ、くそが。
「えへへー」
「……はあ」
やはり俺のひざの上がお気に入りらしい。こう背中を預けられてしまうと、俺は目を閉じるか、もしくはそこらへんの家具に目を向けるよりない。それ以上に視線を下げてしまうと、絶景が広がっているからだ。この角度から見下ろしてしまうと、谷間はおろか、布地のゆるさのせいで突起部分まで見えてしまいそうなのだ。
ああ、揉みしだきたい。いや。
「そういえば勇者さんって、おっぱいを触ったことってあります?」
ぎょっとする。
「挟んだり、吸ってもらったりもしちゃいましたけど、メルちゃんがずっと手を縛ってたので、わたしたちのをちゃんと触ったことはないと思うんです。……どうですか?」
どうですか、とは誘われているのだろうか。経験の有無を聞かれているのだろうか。
もし、ないと言ったら、触らせてくれるのだろうか。頼めば、きっと喜んで差し出すのだろう。そんな予感すらある。
「ない、けど……」
ないと言ってしまう。俺は、弱い。
だって。
「じゃあ、触ってみます?」
これは間違いなく、回避できた誘いであるはずだからだ。
「い、いや」
「いいですよお」
はーい、と両手で持ち上げて見せる。収まりきらない柔肉がとろけて零れ落ちそうだ。
「別にレベルをもらうわけじゃないですから。勇者さんのお仲間さんが助けに来るのもいつになるかわからないですし、少しくらい楽しいことがあっても……。その、どうですかあ?」
「……い、いや、その」
「ちょっとだけですよ、ちょっとだけ」
ヤだったらすぐ離せばいいんです。わたしはそうして欲しくないですけど。甘えるように小声で言う。
触るだけで済むだろうか。どうせまたダメになるんじゃないか。
これは罠だ。罠に違いない。俺をさらなる奴隷にするための策謀に違いない。そう考えなければいけない気がする。……でも、この子の言うように、大したデメリットがあるわけじゃない。デメリットはない。デメリットはない。別に、問題は。
無意識のうちに息が上がってくる。わかる。俺は止められない。俺が俺を止められない。
「ほらー、いいですよ?」
「……っ」
これはただの時間稼ぎ。いや、時間を稼いでいるわけじゃない。待っているだけだ、その時を。俺じゃない。俺のせいじゃない。俺ではなく、だめな自分がいつかその誘いに乗ってしまうその時を。そのおっぱいに触れられる、その幸せを。
「もう、触らないんですかー?」
「……う」
「ちょっとだけですよ」
「いや、ちょっととは言っても」
「ちょっとはちょっとですよ。少しだけなら」
くら、くら。
「……少しだけ、か」
「そうですそうです。少しだけ」
「い、……いや、でもさ」
「いつやめてもいいんです」
「……」
「大丈夫ですよ。大丈夫」
秘めごとのように、囁く。喉にかすれる音が心地よく、甘く響く。
「いい、のかな、ちょっとくらい」
「そうですよお。まだお仲間さんが来るまで時間があるんですから」
ふう、ふう。自分の呼吸が聞こえる。
「いい、の?」
「いいですよお」
「いや、ふ、いや、でも、やっぱりそんな」
「ふふ、大丈夫です。わたしは嬉しいですから」
触って欲しいんです。触ってください。
「はあ、触って、欲しいの?」
「はい、触ってください」
囁く。より小さく、より怪しく。これは秘密。誰にも内緒。
「ちょっとだけ、だから」
「はい。ちょっとだけ、触ってください」
両手が浮く。おっぱいしか見えない。谷間しか見えない。
「ちょっとだけ、ね」
「はあい。どうぞお」
ミルが腕を上げ、脇を広げる。俺はそこに腕を滑り込ませる。
「す、少しだけ」
「少しだけ」
ふにゅ。
「あっ」
「あ、あ」
掌が柔らかい丘に触れる。力を入れなくても、布地の上からほんの数ミリ沈む。
「ああ、あああ」
突起を感じる。その瞬間に、女の子の胸を俺が触っている事実を強く感じる。これはいけないことをしている。してしまっている。
「はあ、はあ、はあ」
「んっ」
ミルが身をよじる。腰がうねる。俺のモノがずりと強く擦れる。何かが弾ける。
「ああああ、ああ」
指が動く。好き放題にぐにゃぐにゃと。その動きの全てに、おっぱいが歪む。布越しなのに、いつまでも吸い付く。どうしても離れない。どう動かしても、どう沈めても、それは形を変え、掌に指にいつまでも残る。ずっと残る。
押せば沈み、引けば付いてくる。おっぱいの領域に居る限り、指がどう動いても逃げられない。手首から上の全てが捕らえられて、その魅力を伝えきるまで帰してはくれない。その柔らかさに誘い込まれて、この上ない接待を受ける。
は、は。無意識に短く息を吐く。親指から小指までぐちゃぐちゃにこね回す。それなのに、ずっと吸い付いてくる。手に感じる突起をたまらずにつまむ。ミルが声を上げ身をよじる。甘い体臭を擦り付けられる。愛撫しているのは俺なのに、意識がぼうっとしてくる。指の感覚だけがやけに鮮明に、いやらしい桃色の信号になって脳に運ばれてくる。ああ、いい。これがいい。
もにゅ、もにゅ、もにゅ。
掌全体で揉みしだく。たまらなさに身震いしてしまう。ミルが体を火照らせて、上気した頬を猫のように俺の胸に摺り寄せてくる。ああ可愛い。俺におっぱいを揉ませてくれるこの子はこんなにも可愛い。
揉む。いつまでだって揉める。それだけで俺はいい。他には何もいらないはずなのに、どんどん苦しくなる。ミルのおしりの下で、最大硬度のモノが悲鳴を上げている。
「勇者さん、ほら……」
ミルが胸を隠している布を押し広げ、その隙間に俺の手を誘う。昨日、俺の顔にぱふぱふをしてくれた、生のおっぱいに、両手が。
「……っ!」
入る。入ってしまう。声にならない感動が押し寄せる。手にたっぷりとした質量。質感。乳首に直に触れる。俺に吸わせてくれたえっちな突起。唾液が止まらない。ああ、好き。俺はこれが好き。これが欲しい。
全ての男は負けてしまうだろう。全ての者はダメにされてしまうだろう。明らかな罠。おっぱいの誘惑に自ら嵌っていく。レベルと引き換えに、この子の虜になって。肉欲の限りにそのおっぱいを貪って。
「あっ、ミル、ミルちゃん、あはあ」
「ひゃ、やん、そうですよお、あっ」
負ける。負けて本望。力を奪われたってこのおっぱいが揉めるなら。なにものにも変えがたい、イケナイ魅力。これに堕とされたい。騙されたい。俺の手はもうその感触に踊らされ、罠に嵌って、帰ってこられない。それでいい。それがいい。
むにゅり、くにゅ、ぷにゅぷにゅ。
ああ苦しい。下半身が苦しい。はやく息をしたい。はやく刺激が欲しい。
それでも揉んでしまう。苦しいのに潜ってしまう。もっと深く、深く、深く。掌が、指が堪能できる限界まで、興奮に脳が焼き切れるまで。
「ああ、はあ、はああ」
乳首。ぴんくの乳首。俺が吸った小さくて形のよい乳首。つまんで、転がして、ひっぱって。夢中。まさに夢の中。夢の世界。こんなことが叶うなんて。
「ああもう、ああ、ミルちゃん、ミルちゃん」
「あっ、勇者さん」
もう耐えられない。
思い切りおっぱいを抱きしめ、その軽い体を少し持ち上げてずるりと腰を抜く。飢えた野良犬がご馳走に向かって猛進するように、はしたなく、恥も外聞もなく、息を荒げよだれを垂らして回り込む。正面。薄い布に指をかけ引き上げる。こぼれる。ぷるん。
「あっ」
「はああああああ」
顔が飛び込む。挟まれたい。乳首を吸いたい。同時には叶わぬ願いに混乱しながらも、その両端を手に抱え、間に挟まった顔に向けて圧迫する。ああ、昨日と同じ。ダメになれる。俺はまたダメになれる。
胸を支える右手がすぐにそれを離し、自らの下半身へ向かう。もう、はやく、はやく出させてやらないと。
勃起は極大。一度、二度の往復でも意識が飛ぶほど気持ちいいかもしれない。だっておっぱいがある。俺の顔にはミルちゃんのおっぱいがある。これで贅沢にイける。
もはやこの子のおっぱいが自慰だ。その存在自体が俺のオナニーだ。この子の絶品とも言える乳肉はおかずなんかではない。この子のおっぱいがイコールで繋がるのは主菜でも副菜でもなく、ごはんだ。ごはんが二杯なんだ。
ぐ。
自身へと向かった指先が、その先端にすら触れることなく止まる。自分の意思で止めたわけでもなく、ミルの手が俺を制止したわけでもない。
ただ、止まったのだ。それ以上先に進まないのだ。謎の斥力のようなものに阻まれて、最愛の息子を撫でてやることができない。
「なっ、ふっ、なにこ、んふ」
「あ、それは……」
足りない。あまりにもどかしい。その謎の歯がゆさの全てをおっぱいにぶつける。乳首を吸いながら、その肉に顔を埋める。ああなんてえっちで素晴らしい。こんなに興奮できるのに、こんなに気持ちのよい射精ができそうなのに。
「ミルちゃ、ミ、ねえ、あふ」
「んっ、はい、わかってますよお。これは、あっ、たぶんメルちゃんのまほ、っ、魔法ですねえ」
「んんんっ」
いかんともしがたい右手をまたおっぱいに戻す。また埋まる。埋める。自らの顔にすり寄せる。舐める。唇でかぶりつく。
「この感じですと、わたしの、んっ、手なら」
そっと伸びてくる小さな指が、その先端にちょこんと触れた。電撃が走る。女のような声をあげてのたうつ。
「ああ、ミルちゃん、さわ、ふ、触って、それを、ミ……ッ!」
「はあい」
そのままするりと撫で降ろして、きゅっと捕まれる。心を捕まれる。
くにゅ。
「んぐううううううっ」
くにくにくに。
唾液が流れ出る。おっぱいに夢中になりながら、陰茎をしこしこされる。心をしこしこされる。堕ちる。いけない所までいける。もう戻れないところまで。
それが突如なくなる。ひたりと、その手が止まる。俺はすぐに泣きそうになる。
「ミ、んふ、ミル、ちゃ」
余裕もなく、誇りもなく、懇願する。
俺の両頬を小さな手が包む。
「はあ、勇者さんすごくいいお顔です」
目を細め、頬を染め、とろけそうな笑みを見せる。ぞくぞくする。
「でも、だめなんです。メルちゃんが帰るまで勇者さんをイかせちゃだめって言われてて……でも勇者さん、すごく辛そうです」
まるでキスを求められているのかと勘違いするほどその眉は切なげに、それでいて口元には微笑を浮かべ、目の前の俺を愛おしそうに見つめている。ああ我慢ならない。辛そうに見えるなら襲って欲しい。そのまま奪われてしまいたいのに。この子の好きなように弄ばれて、絡めとられて。下半身をぐちゃぐちゃにされて。
「だから、その、もし良ければ、イっちゃう前まで気持ちよくしてあげたいです」
おっぱいとか、おててとか、お口で。
俺は何を考える必要もなく、その提案にすがりついた。
「あっ……っ、……ぐっ!」
「またすとっぷ、ですよお」
それは天国のようで地獄だった。
「ああっ、もう。も、ミル、ミルちゃん」
「あ、いいですよお勇者さん。すごくいいお顔です。はあ、わたしもイかせてあげたいのに」
俺はわかっていなかった。ただ愛撫が欲しかった。陰茎になにかして欲しかった。そして、それにすがりついた先には。
「……どうしますかあ? もう一回、します?」
「あっ、してっ! してくれええあああ」
「はあい」
ぐにゅり。
「かっ……!!」
腰をミルの膝にのせ、自らの分身を無防備にさらし、決して味方とは言えない相手のおっぱいに挟んでもらう。まだまだ純粋な息子が、ミルのおっぱいに、男をダメする魔性のオンナに包まれて、えっちな誘惑を受ける。
ぐにゅぐにゅ、すりすり。えろり。
見えなくなるほど全方位を包まれ、先端を舐められる。ムスコがそのオンナの良さにひとたまりもなく恋してしまう。騙されているのに、それはパイズリという名の策略なのに。精液を奪うためにすり寄ってくるだけなのに。俺のモノはどうしようもなく恋してしまう。愛を求めてしまう。ダメにされてしまう。
待ち望んで、ヒクつかせて、緊張に体をカタくして。もっと近づいて欲しいよ。もっと。
「あむ」
跳ねる。体が跳ねる。もうちょっと。もうすぐ。
あ、あ、あ。
「すとっぷ、です」
「はああああ、あがああああ」
涙がこぼれる。盛大な男泣き。これほどまでに、望んでいるえっちをしてくれるのに、こんなにも辛くて。
「ああイかせてあげたい、イかせてあげたいです勇者さん」
本心かもわからない。悦に入った表情に嗜虐性が垣間見える。はやく、はやく最後までイジめて欲しい。もっと、心の底から屈服してしまうほどにイジめ抜いて、イかせてほしい。イかせてほしいよミルちゃん。イきたいよ。
「もう一回、しますかあ?」
「する、する! して、はやく、はやく」
これは地獄。ひたすら光を求め、もがき続ける地獄。あまりにえっちで、幸せな地獄。
「はあい。おちんちんぱふぱふです」
ぱふん。ぱふん。
顔をゆがめて悦ぶ。唾を飛ばし声をあげる。その先を予感して絶望する。ああミルちゃん。お願いだよ、ミルちゃん。
「すりすりすりー」
「んあ、あはっ」
息苦しい。悦ぶ体も、気持ちも。その先を知っているから。また、イけないから。
「……勇者さん、ここだけのはなし、です」
おっぱいからほんの少しだけ頭をだした陰茎に語りかけるかのように、ひそひそと口にする。
「もしレベルをもらっちゃってもいいなら、メルちゃんに内緒でいかせてあげますよお?」
じゃないと、もう苦しいですよね。そう言いながら、舌の先で亀頭をツンと突く。
ああ、いま、いまなんて。
「いか、え、いかせて、くれ……?」
「そうです。いかせてあげますよお?」
「うああ、あ」
嘘のような言葉に、俺はさらに涙を垂れ流す。溢れてくる。
それは、葛藤に胸を痛めたからじゃない。レベルを奪わせてしまうかもしれない自分を、嘆いたからじゃない。
ただ純粋に、イかせてもらえることを。
「うば、あ、奪ってくれええ! 全部っ、なんでもいいから、出したいんだよおお、出した、ああ、頼む、ミルちゃん。ミルちゃん。ミルちゃん」
「ああ勇者さん、勇者さん」
好きですよお。そう言って、いままでにない強さで陰茎を圧迫する。
「んあっ」
「ああでも、これは贅沢でしょうか。もう一声欲しいなあ、なんて」
「なにを、なに、はやく、はやくう」
「わたしのこと、もし良かったら、いまだけ、様を付けて呼んでもらえないですかあ?」
俺を征服してくれる相手がたとえ小柄な少女であろうと、それが敵であろうと、なにも迷うことはなかった。
そこに誇りなど、欠片も。
「ミル様っ、ミル様ああ!! イかせてください! レベルを奪ってくださいいっ!!」
「あはああ、いいですう」
ミルが体をくねらせ、両頬を手で覆い、うっとりと悦に浸る。
「ああ、好きですよお勇者さん。可愛いです。あとはぜーんぶ任せてください。契約は完了です。1レベル分を、わたしのおっぱいで搾り取ってあげますよお」
「ミル様、ミル様……!」
「はいはーい、いい子ですねえ。いまからたっぷり挟んであげますよお」
むぎゅう。
「いきますねえ」
むにゅ、もにゅり、すりすりすり。ぐにゅう、ぐに。
容赦のない幸せが陰茎を襲う。恋しい相手に目一杯カラダをこすりつけられる。期待に膨れ上がる。すぐ先の未来に、俺を奪い取ってくれる幸福に。
「一回目はすぐイかせてあげますね」
昇っていく。いままでにないペースで。
それは柔らかさの暴力。どれだけ押し付けられても、どれだけ擦り付けられても、どれだけ押しつぶされても、陰茎の形に纏わり付く快感にしかならない。無理だ。こんなのに誘惑されて、恋をしないオトコはいない。なによりも大好きで、なによりも欲するものを、探すまでもなく、お願いする暇もなく、充分をさらに超えて与えられる。
絶叫する。いままでのような愛撫ではなく、イかせるための動きに。
「ほらほら、出しちゃってください、勇者さん、ね、ね」
言葉は潤滑油に変わる。女の子に出すことを求められて、少しでも気持ちよさを長続きさせようとする我慢さえ、溶かされて。
「出してください。だして、だして」
気持ちよくありたい。それが、出したいに変わる。ベクトルは逆。自ら最後の扉を、その施錠を、内側から外して。
「ああああああああっ、出る、でるでるでる、ああああ」
びゅくう、ぴゅっ、ぴゅううう。
全ての感情が下半身に凝縮され、それが放たれるような、とてつもない開放感。俺自身が解き放たれる。この部屋に、世界に分散していく。
ぴゅう、ぴゅ。
透明でキラキラした液体が飛び散って、ミルの胸にねっとりと付着する。これは精液じゃない。俺の大事な、大事な。
「はああ、なんてすごい、なんて濃い」
女の子は胸についた液体を手に広げ、頬に塗り、舌で舐める。すぐにその肌に吸収されて、なくなっていく。ぷるりと身震いする。
喪失感。何かが抜け落ちた感覚。背徳に心地よく体が震える。なにが無くなったのかをわかっているからこそ、呆ける。自らのダメさ加減に屈服する。なんていい気持ち。
「まだですよお勇者さん。いまの勇者さんの1レベルはすごい大きさなんですよお? せっかく契約してくれたんですから、残りの分もたーくさん気持ちよくしてあげます。そうですねえ、あと2回くらいはじっくり、ふふふ」
もう一度挟み込まれる。まだ精液は奥に残っている。絶望的に気持ちよかったのに、まだ出したい。イき疲れがなにもない。これがレベルドレイン。
「こんどはお口もつかって……」
おっぱいという魔性に屈服した息子に慈悲はない。
「ああ、ミル、ちゃん」
「こーらー、いまはミル様、でしょう?」
「ああ、ミル様」
「はあい」
可愛らしく返事して、あーんと口を開く。
にちゅり、ぬり、ぬり。
「あ、ん」
女の様な声が出てしまう。もう仕方がない。すべては仕方がない。
「ん、ん、ん」
先端は口に含まれ、竿にはゆったりとおっぱいが練り込まれる。
昨日を思い出す。昇らせるでもなく、イかせるでもなく。ただただその行為を続ける。いつしか男が勝手にその行為に意味を見出して、勝手に興奮して出してしまう、そのときまで。今日はミル様のおっぱいで。
「あむ」
ぬり、ぬりゅ。ぺろぺろぺろ。
「んふ、ああん」
いつまでも続いていく。だらしなく、ただれた幸せ。
ああ、おっぱいでされている。だめだ、そんなことを考えたら。
もっと長くこの幸せを。幸せ? レベルを奪われることが? ああ、やめろ。
変態。変態。スケベでどうしようもない俺が、仲間の助けを待たずして、避けられるはずの誘惑に、陰茎を晒して。ああやばい。気持ちいい。
そう気持ちよくなってるんだ。敵のおっぱいで。俺は言ってしまったんだ。奪ってくださいだなんて。ああ、あああ。
「んふふ、またイっちゃいそうです?」
やめろ、やめろお。
「本当にいけない人ですねえ。でも大丈夫です。わたしとメルちゃんはいつまでも一緒です」
行為は変わっていない。ずっとおっぱいと、口。なのに。
「勇者さんがどれだけダメになっちゃっても、わたしたちがちゃんともらってあげます。このおっぱいで、こうやって……」
すり、すり。
びくびく。また昇ってくる。だってそれはおっぱいで。どうしようもなく柔らかくてえっちなおっぱいで、それで、俺のモノを。
「おちんちん、気持ちいいですかあ? おっぱいでぐにゅぐにゅされちゃって気持ちよくなっちゃいますかあ?」
ああやめろ。あああ。
「おちんちんまた硬いです。勇者さまのおちんちん。ふふふ。負けちゃうおちんちん。ダメですねえ。また出しちゃいますねえ」
「ああ、あ、あ」
「こんないけないおちんちんは、わたしのおっぱいで懲らしめてあげます。えい、えい」
むにゅ、もにゅ。
「あ、ぐ」
「ほらまた硬くしちゃってえ、お仕置きが足りないですかあ? ほらほらほら」
すりゅ、すりすり、ぐにゅう。
ああお仕置きされる。おっぱいで、おっぱいで。
「えっちでいけないおちんちんには、こうですよお。あーん」
ちゅ、ちう。えろえろ、あむり、ぬる、ぬり。
また跳ねる。もう出そう。出してしまいそう。
「出しちゃいますかあ? 出しちゃうんですかあ? いけませんねえ、そんなおちんちんは降参するまでやめてあげません」
ああ降参したい。だめなおちんちんを叱られて降参してしまいたい。
「もういけませんねえ、これで最後ですよお。ほら、出しちゃったら最低ですからねえ?」
はちきれそうな亀頭にぷるぷるの唇が吸い付き、おっぱいに濾しだされながら一気に吸い上げられる。
ああ出る。最低。おれは最低になれる。出してしまえる。
びゅく、びゅくううう。ぴゅう、ぴっ。
跳ねる。全て吸われる。透明な液体が。俺の力が、直にその口に吸い尽くされて。
「んん、ちう」
最後の最後まで吸い取られる。
出してしまった。ああ最低。最低だ。いけないことだ。
びくびくと悦びに震える。どうか叱って。ミルちゃん。ミル様。
「んふ、ん」
それを飲み干した彼女が、右手にグーを作って振り上げる。
こつん。嬉しそうな表情で俺の体をよじ登り、またがり、おでこにわずかなお仕置きをされてしまう。
「もうっ、いけない人ですね、勇者さん」
その言葉に、顔の筋肉が溶け落ちる。天使。小さな黒い翼の天使。
ぐい。
「ひゃあ」
「ミルちゃん、ミルちゃん、ミル様ああ」
小さな体を抱き寄せてすがりつく。俺をどこまでも甘やかしてくれる最愛の人。
「あらあら、もう、勇者さんはー」
くすくす笑いが耳に心地よい。甘い匂いも、なにもかも。
「でも、お仕置きはあと一回ありますから。いけない勇者さんは、ぜんぶ出しちゃうんですよお?」
「ああ出す。ぜんぶ、ぜんぶ出す」
「そうですよー」
くすくす。
「ほら、ここに」
ミルちゃんが仰向けに寝そべり、両手で胸を寄せる。ぐに。
「どうぞー」
「ふう、ふ」
興奮をなんとか抑えながら、その小さな体に跨っている。重くはないという。それでも腰が浮いてしまう。
「このパイズリは、メルちゃんが大好きなんです。ほら、これってお互いが求めないと、できない体勢じゃないですか」
確かにその通りであり、改めて言われると意識してしまう。
俺が求めなければ、俺が腰を突き入れなければ、俺がそのおっぱいの虜になっていなければ、成立しないのだ。
「ほら、お仕置きですよお。最後のお仕置きです。いけないってわかってる勇者さんが、自分を負けさせちゃうんです。ぎゅうってしててあげますから」
形が歪むほど寄せられたおっぱいの頂点で、ぴんくの突起が俺を見ている。それはメデューサすら凌ぐ魔力で、見る者を虜にする。ああ摘みたい、吸いたい。ここまできても。なんてえっちな塊り。なんて淫猥な肉。この谷間に、俺が。
「ほらほらあ、勇者さん」
むにい。
寄せる角度で、それはいとも簡単に形を変える。たまった唾液が喉を鳴らす。入れられるんだ、この中に。
「はあ、ふう」
「そう、ゆっくり、ゆっくりです」
にゅ。
その先端が入口に触れる。ああ、これで負けられる。負けてしまえる。
「いいですよお」
促される。ああ入る。決定された未来。抗う術はない。たとえそれが、いままで積み上げたものを奪われる行為だとしても。
ずにゅう。
「……っ、かっ、はあ!」
「あっ」
にゅううう。
自ら腰を進める。自ら敗北に向かう。挟まれる感触に、それを直感する。なんて変態で、なんて最低で。
「あはあ、負けちゃいましたねえ。最低の勇者さんですねえ。でもいいですよお、こうして動かしててあげますから」
すに、すにゅ。
「あっ、あっ、あっ」
見下ろす景色の中で、俺のモノは柔肉に埋まり、交互にぐにぐにと擦られる。乳首が上に、下に。上に。下に。くら、くら。
「ほらほら、このままじゃさっきまでと同じですよ? 勇者さんも動かして動かして」
「うあああ」
出し、入れ。ずにゅう、ずり、ぐにゅう。
背筋が張り詰めるほど気持ちいい。ぞくぞくするほど圧倒的な敗戦。いや、戦ってすらいない。負けにきたんだ。俺はここに、このおっぱいで、陰茎を負かしてもらうために。おれ自身の誇りを陵辱してもらうために。
「もっと、もっと動かしてえ」
ずっ、にゅ。
顔が歪む。おっぱいしか見えない。ぴんくの突起しか見えない。その揺れる様が俺を桃源郷に誘う。
すりすりすりすり。
今日いったい、何度その肌が俺の陰茎に密着し、往復したことだろうか。飽きのないその味は薄まるどころかいっそう深まっていくばかりだ。それはきっと、俺の気持ちと比例して。
「あ、は、奥まできてください。舐めてあげますよお」
愛してくれる。奥までいけば、たくさん。
「んああ、お願い、お願い」
虚ろに放たれる。この言葉は俺の口が発しているらしい。
おっぱいに捉えられながらも無様に突き出す陰茎の先。そこに、ミルが口を開く。
にゅるり。
「んふうっ」
ねりねり、ちゅう、ちるちる。
笑っている。俺がいま、間違いなく悦に眉を曲げている。それは負けなのに。敗北を重ね重ね塗りつけられているだけなのに。
俺が求めなければ、できない態勢。されてしまうのではなく、自分からそこに向かうのはまったく違う。戦術以前の、根本的な、敗北。
それを、この子の小さな舌が教えてくれる。何度も何度も練り込んで、刷り込んで、教えてくれる。くすくす笑いが教えてくれる。あなたの負け。あなたの負け。
「はあああ、あっ」
心ごと征服される幸せに、呆ける。舌の愛撫に、身を震わせる。
「気持ちいいですねえ。ほら、もっと動いて動いてえ」
促されるまま、腰が動き出す。ああもっと。もっとすれば。
「んあっ、あっ、あはっ、いっ」
ぐちゃぐちゃ、ぐにぐに、むにゅう、れろ。
挟み、圧迫し、擦りつけ、交互に揺らし、そこに入れ、出して、入れて、奥まで、舌に絡まれて。それは快感の渦。四方八方からくる幸せが、陰茎を限界に向かわせる。目に映るのは万華鏡。キラキラして、ぷにゅぷにゅしていて、散らばり、纏わり付く。
もうわからない。腰が止まらない。ただ負ける。光の先。掴み取るのは完全なる敗北。おっぱいに負けてまった男の、惨めで、幸せな敗北。
「あっ、いっ、いいいっ、ふああああっ」
「出します? 出ちゃいそうです? おちんちんもうダメですかあ?」
「だっ、だめっ、あっ、あっ」
「いいですよお」
せりあがってくる。知っている。いつもの感覚。見に覚えのある、期待する未来への疾走。向かう。向かう。昇っていく。
「んっ、勇者さん、これで最後です。奪って欲しいって、ちゃんと、あっ、ちゃんと言えた勇者さんだけのご褒美ですよお。出してください。だしてだしてだして」
ああ負けちゃう。負けちゃうう。
「だしてっ、だしてっ、だしてえ」
歯を食いしばり、奥へと突く。ミルが嬌声をあげて、その唇で。
「――――――――――っ!!」
吐き出す。汚していく。どぷり、どぷりと勢いよく。白くて濁って、わずかに煌く。レベルの残りカスと、何より出したかったドロつく液体が混ざり合って、ミルの胸を、口を顔を、汚していく。負けていく。
ああ負けていく。俺がどんどん負けていく。気持ちいい。
「んっ、んっ」
ぬるぬり。
最後の最後まで搾り取られる。俺が口から発しているのは歓喜の声か、断末魔か。
どちらでもいい。俺は負けることができた。この子に、ミルちゃんに征服された。
ああ。ああ。
「ああ、気がつきましたか? でもお疲れだと思います。そのまま眠ってしまって大丈夫ですよお」
覚醒しきらない、鈍い目覚め。おっぱいの中。白いベッドの上、ミルちゃんに頭を抱きかかえられて、おっぱいに包まれて、俺は小さく身を震わせる。
「大丈夫、大丈夫ですよお。よしよし」
後頭部を撫でられる。幸せだ。ずっと幸せ。負けて幸せ。
「いいこ、いいこ。ずっと一緒です、勇者さん」
漂う。ミルちゃんという大きな海に、ただ優しく、漂う。
いいこ、いいこ。
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